ゆうちょ銀行と日本郵便、「相互依存」の矛盾 銀行株の売出価格は仮条件上限となったが・・・

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ゆうちょ銀行は日本郵便に窓口業務を委託して成り立っている(撮影:今井康一)

10月19日、ゆうちょ銀行IPO(新規上場)株の売り出し価格が1450円で決定した。1250~1450円とされた仮条件価格の上限で決まった形だ。売り出し株式数は4億株強だが総需要株式数はこれを十分に上回り、しかも需要の相当数が上限価格だったことなどが勘案された。19日夕方以降、各証券会社でIPO株購入申込権の抽選結果が明らかになり、当選して購入を決めた人は23日までに申し込むことになる。

そのような、ゆうちょ銀行株の購入申込期限が迫りつつある10月15日、全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は、定例会見で、ゆうちょ銀行が抱えている本質的な問題を、記者からの質問に答える形であらためて指摘した。

「ゆうちょ銀行と日本郵便との取引にかかわる透明性を確保することが重要だ。両社の間の契約の内容あるいは今後のあり方が、しっかりと示される必要がある。その不透明感が残ることはありえない」

年間6000億円もの手数料を日本郵便に支払い

というのも、ゆうちょ銀行は日本郵便に対して毎年6000億円強もの委託手数料を支払っている。ゆうちょ銀行の営業経費1兆円強の5割以上にのぼる最大経費だ。ゆうちょ銀行は、全国に2万4000カ所以上の店舗があるが、自ら構える本支店・営業所はわずか234カ所のみ。99%以上は日本郵便の郵便局に窓口業務を委託している。ゆうちょ銀行の実際の営業は郵便局員に依存しているのだ。そうした営業現場を担う日本郵便とゆうちょ銀行との間の契約内容や今後のあり方は、これまで十分に示されてこなかった。

目論見書など新規上場にかかわる資料では、ゆうちょ銀行が日本郵便に支払っている委託手数料の内訳と定義について、初めて明らかにされた。2015年3月期の委託手数料は6024億円。その内訳は、窓口基本手数料2509億円、貯金関連2202億円、送金等968億円、資産運用商品関連23億円、営業・事務報奨321億円だった。

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