(第40回)スリム化で復活するアメリカ自動車産業

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新興国が強いのは、労働集約的な製造工程、なかんずく最終組み立て工程である。だから、エレクトロニクスのように諸工程を切り離せる産業は、新興国に移動する。ところが、自動車生産は、技術的理由のために、水平分業化することが難しい。このため、エレクトロニクス産業のような事態が生じにくいのである。

こうした技術的理由に加え、政治的な理由もある。自動車産業は政治力が強い産業なのである。そうなるのは、垂直統合であるため、企業のサイズが巨大になるからだ。自動車会社は、どこの国でも巨大企業だ。

「GMにとってよいことはアメリカにとってよいことだ」という論理がまかり通ることになり、政府からさまざまな支援策を引き出す。09年においても、アメリカ政府は自動車産業を救済した。日本でも、一旦終了したエコカー補助が復活した。

政治的に強いのが垂直統合企業であることは、日本の経団連を見るとよく分かる。会長が輩出している企業は、鉄鋼、電力、自動車に圧倒的に多い(なお、電力が垂直統合なのは、技術的理由ではない。事実、アメリカでも戦前の日本でも、発電と送電が分離されている。日本の電力会社が発送電を包含する垂直統合型なのは、戦時中の統制経済の遺物である。戦前のように小規模な企業が併存するような産業のままならば、電力会社が強い政治力を持つことはなかったろう)。企業が大きくても、電機産業は経団連で大きな力を持っていない。本連載の第38回で、「製造業の政治的発言力が強い」と述べたが、製造業のどの分野も同じように強いわけではないのだ。

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