下町ロケットに学ぶ「弱者が強者に勝つ方法」 町工場が夢を見たっていいじゃないか
イギリスで18世紀の半ばから起きた産業革命によって、職人の技能である「クラフトマンシップは死ぬ」といわれた。しかし、それから150年が過ぎた今、イギリスのクラフトマンシップは、以前よりも見直されている。機械は人間の仕事を奪っていったが、突き詰めていけば、結局、人間の手で作る製品に機械が勝てない部分も多い。
『下町ロケット』の劇中でも町工場の製品が、他を圧倒するシーンがある。町工場の強みは、機械でも作れないモノが作れる事だ。最新のテクノロジーには、いつも町工場の部品が使われている。それが最大の武器だ。
町工場の強みは「特許」と「社員の絆」
町工場の武器は、技術の他にもう一つある。それが特許だ。どんな大きな会社であっても、特許には手出しができない。ただ、ここにはリスクがある。特許を取るには、膨大な研究費が必要だ。植松さんも研究費の捻出には、大いに苦しんだ。研究費をつぎ込み、特許取得というギャンブルに挑み攻めるのか?それとも、ずっと下請けを続け、工場を守るのか?
植松さんは社員たちを説き伏せ、研究を続け特許を取得。ドラマの中で佃航平も同じような場面に直面する。特許によって、下請けだった町工場と大企業の立場が逆転。攻めの経営が成功し、弱者が強者に勝つ構図をつくったのだ。
町工場の技術を支えるもの、それは「社員の絆」に他ならない。一つの製品を作るために、社員たちが、長年の経験からアイデアを出し合い、自分が得た高い技術を、同僚に惜しみなく伝える。彼らは、共通の職人魂を持つ。
植松さんは社員を「仲間」と呼ぶ。全国で講演を行ったり、北海道内の小学校で積極的にロケット開発の授業を手掛けたりする植松さんの下には、多種多様な人材が集まる。エリートではなく、元保育士や元焼肉屋さん、高卒の人も多い。仲間だから、フォローしあい、言いたいことがいえる。すると、自分たちの実力以上のモノができる。実際、彼らの元には、毎年、NASAの研究員が視察にやってくる。
植松さんは「『どうせ無理』という人間の自信と可能性を奪う最悪の言葉をなくしたい」と訴えている。大人は、いくつも夢をあきらめてきた。「ミュージシャンになりたい」「科学者になりたい」。しかし、たいていの人はその夢をかなえられない。「社会人になるということは、夢をあきらめるのと同じだ」という人もいる。
だが、町工場が宇宙へと羽ばたいたように、たとえどんな境遇に遭っても夢を叶えることは不可能ではない。夢を持ち続けることの大切さを植松さんは教えてくれる。
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