ロシア経済、潜在力は魅力だが、見えない「近代化」策

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医療、エネルギー関連など高付加価値産業を育成

原油価格が1バレル100ドル前後と高止まりしている中、資源収入が安定しているうちに経済の構造改革を成功させて過度な資源依存から脱却し、ハイテクやバイオ産業など、高付加価値の産業を育成・拡充させる--。これがメドベージェフ大統領、そして次の指導者になるであろうプーチン首相の思惑だが、現段階ではまだ具体策が少ない。

09年にメドベージェフ大統領が鳴り物入りでブチ上げたプロジェクトがある。それは、ロシア版シリコンバレーとも言えるイノベーションセンター「スコルコヴォ」だ。「スコルコヴォ」はモスクワ近郊にある村の名前で、医療やエネルギー効率化、核エネルギー、宇宙通信、IT(情報技術)分野でのベンチャー育成を目指した研究開発都市が建設されている。この5分野は、そのままロシア経済の「近代化」の目標に当てはまる。15年には入居者の活動が本格化する計画で、総工費は1200億ルーブル(約3000億円)だ。

ただ、最近ここを訪れたモスクワ在住の日本人ジャーナリストは「言われているほど工事などは進捗していない様子だった」と打ち明ける。現在ではビジネススクールが核となっているが、「その学生たちの姿が見える程度」(同)。海外からの投資を呼び込みたいが、投資環境が特に優れているわけでもなく、スコルコヴォへの海外企業の食指はまだ動いていないようだ。

だからこそ、WTO加盟を投資呼び込みの切り札としたいが、プーチン首相はもともと保護主義的な傾向を持つ。それは、資源関連で設立された合弁企業がその後ロシア側に買収されたりした例があることでもわかるだろう。

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