ANAのマレーシア線がJALと競合しない理由 13年ぶり再参入の狙いと課題を探る

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ただし、ここでANAにとっての課題が見えてきた。それはマレーシア現地における「ANAの知名度」だ。クアラルンプール発・成田行きで筆者の隣に座ったマレーシア人ビジネスマンはこう言い放った。「JALの名前は知っていたが、ANAは広告を見て就航することを知った航空会社だ」。

なんせ、13年のブランクがあるワケだから、知名度が低いのは仕方がない。ロイ・ゲイANAクアラルンプール支店長も「ANAが運休している間にマレーシア国内の認知度が下がったことは確か」と認める。

広告宣伝や地道な営業活動がカギ

幸いなことに、ANAは英国の航空格付け会社であるSKYTRAX社の5つ星エアラインという称号を持っており、航空会社として国際的に認められているというアピールポイントになる。この活用をはじめとするマレーシアでの知名度向上を狙った広告宣伝や、地道な営業活動がカギとなるだろう。ロイ・ゲイANAクアラルンプール支店長は「旅行会社や出張手配を専門とするTMC(トラベルマネジメントカンパニー)などを通じての販売を強化し、知名度を高めていきたい」と話している。

ロイ・ゲイANAクアラルンプール支店長

知名度、ブランドを高めなければ、いくらスムーズな乗り継ぎができる運航ダイヤを設定しても、高い搭乗率は確保できない。今後、外国人利用者の増大を目指すANAにとって、今回の取り組みは将来を占う試金石ともなる。

マレーシアに出張や旅行へ行く日本人の視点で見てみると、ANAの成田-クアラルンプール就航により、東京(成田・羽田)-クアラルンプール線は4社から選べるようになった。とにかく安く行きたい旅慣れたLCC利用者層はエアアジアX、スケジュール重視でワンワールドをメインでマイルを貯めている人はJALとマレーシア航空、深夜便が苦手な人やスターアライアンスをメインでマイルを貯めたい人はANAという構図になるだろう。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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