トヨタ産業技術記念館、「来場者急増」のワケ 入場料500円でここまで楽しめる!

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1994年の開館以来、十数万人程度だった来場者数は2013年に過去最高の30万人を突破。昨年は37万人で、2年連続の記録更新となった。館が調査したところ、そのうち外国人旅行客は2割ほど。内訳は団体客の多い中国を筆頭に、米国やヨーロッパから韓国、香港、タイ、マレーシアなどアジアの新興国、南米やアフリカなど世界中に広がっていることがわかった。

実物の動く展示を通して、トヨタという世界企業の意外な歴史や精神性を知る。そんな施設が東京や京都、高山などの人気観光地の途中にあり、しかも大人1人500円という安さ。思わず周りに勧めたくなる「穴場感」は万国共通のようだ。

ここ数年の口コミには、案内係の対応が冷たいなどの不満はなくはない。ただ、それはかなり少数派で、大半は礼儀正しいガイドの「おもてなし」も高評価の要素だ。「PRが主で、もうけは優先していない」(加藤マネジャー)というトヨタグループの余裕が、低料金と質の高いサービスを両立させている。

課題は地域全体の観光戦略

目下の課題は、この人気を地域全体にどう波及させるかだろう。「もっと地域のネームバリューを上げないと、トヨタは知っていてもナゴヤ・アイチってどこ?のままになってしまう」と指摘するのは名古屋在住のラジオDJで、インバウンド観光アドバイザーのクリス・グレンさんだ。

「外国人観光客にとって、名古屋城よりも記念館の方が人気なのはビジネス客の多い名古屋ならではなのだろう。でも、せっかくなのでここが数々の戦国武将を生んだ日本の『ふるさと』であることも知ってほしい。記念館のノウハウを街全体の観光戦略に生かし、自分たちの街にプライドを持って、どんどん世界にアピールするべきだ」と話す。

トヨタの次は、日本の都市のグローバルな進化を見せるべきかもしれない。

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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