――野尻さんは心臓外科医のキャリアを捨てて経営者の道に入られたわけですが、医師の世界を離れることに躊躇はなかったのですか。
それはなかったですね。
心臓外科医として約10年間、第一線で働いてきたわけですが、どれだけ医療技術が進歩しても、外科手術では助けられない患者さんがいる。これが厳然たる事実なんですね。だけど医者にとって、こんなに悔しいことはないんです。
それで、心臓外科医として勤務していた東京女子医大付属日本心臓血圧研究所を退職し、人工肺などの開発で実績があったテルモに転身したんです。この会社なら、私が目指す人工心臓を作れるかもしれない、と。
クビ覚悟で飛び込んだ研究者への道
――重い心臓病の患者さんを救いたいという思いは、ずっと一貫していた?
メスを握り続けるよりも、人工心臓の開発に取り組んだほうが、より症状の重い患者さんを救うことができるはずだ、という思いですね。



















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