対話への道/対話が破壊されるとき「同じ」ことの危険性

対話への道/対話が破壊されるとき「同じ」ことの危険性

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

海外で日本人旅行者、特に団体旅行の人たちを見ると、何というかイラッとするんですよ。本当にイヤなんです──。

海外在住の日本人、それも外国に住んで日が浅いと、こういう人がけっこういるものだ。日本人旅行者を毛嫌いするのである。

海外における日本人旅行者の軽薄な振る舞いが我慢ならない。絶対に「日本人しかやらない」ような、「国際的に通用しない」言動。ああいう連中と「同類」と思われたくない。「同じ日本人として」恥ずかしい、などと言うのである。

海外在住者のみならず、ベテランの海外旅行者も、同じような苦言を呈することがある。ただ、これは海外経験の(相対的な意味での)豊富さによる優越感、そして独特の劣等感に由来するものであり、ある意味で身勝手な言い分である。

ごくわずかな経験の差を盾に、不慣れな人たちを侮蔑したり嘲笑したりするほうが、よほど恥ずかしいのではないか。他人の楽しみを揶揄するとはやぼの極みである。「同じ日本人として恥ずかしい」というが、大きなお世話というものだ。

これを、私は自らを恥じながら書いている。自分自身、海外に住み始めたばかりの頃、日本人旅行者を疎んずる気持ちがあったことは否定できないからだ。

これは、日本人の海外在住者や海外旅行者の資質の問題として考えるよりも、対話という観点から考えたほうが面白い。

要するに、「同じ日本人」だから疎んずるのである。そもそも「同類」だからイヤなのである。まさに文字どおりの「同族嫌悪」ということだ。海外という(日本人にとっては)「違い」を基盤とした環境において、「同じ」だから我慢ならないのである。そして、「同じ」なのに肝心なところが少しだけ「違う」から、心底から毛嫌いするのだ。

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