日本株は、再度大きく下落する懸念がある ギリシャは峠を越えても「あの問題」が残る

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さらに、中国に進出した企業も、中国経済の悪化を以前から察知し、撤退を検討しているところも多いという。2014年は、米国からの対中直接投資は前年比で20.6%減り、日本からも同38.8%減っている。世界の企業が中国に前のめりなら、中国経済の失速は悪夢だろうが、多くの企業がすでにそれを予想しているため、内外の企業行動に混乱は生じにくいだろう。

「米国大幅調整、日本株ツレ安」のシナリオ変わらず

中国経済悪化が及ぼす実態経済への影響については、まだ予断は許さないものの、ギリシャ情勢とともに、世界市場を揺るがす度合いは低下していくはずだ。

このため、今週(7月13日~17日)の日本株に関しては薄日が差し、日経平均は1万9700円~2万0200円が予想されるが、これは株式相場という航海における、いわばいったんの「凪(なぎ)状態」に過ぎないだろう。大揺れ船旅の次の寄港地は、ニューヨークではないか、と懸念している。

その理由は6月28日付の当コラム「日本株はギリシャ問題深刻化でどうなるか」でも述べたが、決して米国経済に波乱の芽があるわけではない。再度、米国が大揺れになるかもしれない理由をひとことで言えば、米国株式市場においては、S&P500指数のPER(株価収益率)の高さ(直近週で約17.3倍)が、金融相場だから妥当とされていたが、9月とも見込まれる利上げを織り込んで、PERの妥当水準(2006年以降の平均は14.9倍)に回帰すると懸念されるためだ。

ギリシャや中国の動向を踏まえ、米連銀が利上げを遅らせるとの期待があるようだが、米連銀はまさに米国の中央銀行であり、米国経済そのものが傷まない限り、9月利上げが既定路線だろう(イエレン議長の7月10日(金)の講演でも、ギリシャ等の海外リスクへの言及は弱かった)。

仮に米国のPERが、株価調整により17.3倍から14.9倍に低下すれば、約14%の株価下落となる。その際、同率で日経平均が下落すれば、1万8000円割れを覚悟する必要がある。内需回復という日本独自の要因で、日経平均が米国株ほどは下落せず、1万8000円割れを回避する可能性はある。それでも、先週で株価調整は終わりだ、と確信するのは危険だ。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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