JR九州、新幹線全通で見えた株式上場への道筋

拡大
縮小

観光列車の投入で赤字路線が人気路線に

1987年4月、旧国鉄の分割・民営化を受けて、JR九州は発足した。設立前から赤字が危ぶまれており、JR北海道、JR四国と同様、国から経営安定基金をもらっての独立。基金の運用益は鉄道事業の赤字の穴埋めに充てられる。

民営化後は九州縦貫道(門司−鹿児島)、九州横断道(長崎−大分)をはじめ、域内で高速道路が続々と開通することがわかっていた。黙っていたら高速バスやマイカーに客を奪われるのは明らか。どうすればライバルに対抗できるか。スピードアップと輸送力の増強はもちろん必要だ。しかし、これだけでは足りない。

鉄道の魅力を打ち出せるプラスアルファとは何か。それは利用者に「わざわざ、鉄道に乗ってみたい」と思わせること。そこで得た結論が「乗ってみたい」と思わせるような車両デザイン、そして「また乗ろう」と思わせる接客サービスであった。

幸運にも、JR九州の発足直後に“軍師”が現れた。

ドーンデザイン研究所を主宰する水戸岡鋭治氏。今でこそ名列車を続々と生み出す鉄道デザイナーとして確固たる地位を築いているが、当時は鉄道とは無縁の存在。

JR九州と水戸岡氏の出会いを作ったのは、水戸岡氏がアートディレクションを担当した「ホテル海の中道」(福岡市)。水戸岡氏がホテルと同じコンセプトの観光列車のデザインを提案したところ、即座に採用。これをきっかけに水戸岡氏はJR九州の車両デザインを一手に引き受ける。もっとも、水戸岡氏に言わせれば、「すごいのはデザイナーではなく、JR九州」ということになる。水戸岡氏は、無難なA案、過激なB案といった具合に、複数のデザインを提案する。すると、JR九州は必ず最も過激な案を選ぶという。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT