JR九州、新幹線全通で見えた株式上場への道筋

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JR九州の多くは赤字路線だが、“水戸岡デザイン”の観光列車には、「乗ってみたい」と多くの観光客が押し寄せる。それは数字の上でも明らかだ。今年4月に指宿枕崎線に投入された「指宿のたまて箱」の乗車率はなんと99%。2009年から日南線を走る「海幸山幸」は同85%と、こちらもほぼ満員だ。肥薩線を走る「いさぶろう・しんぺい」は同46%にとどまるが、毎日運行して過疎路線の地域の足としても使われていることを考えれば、大健闘である。

九州を一周する豪華寝台列車を開発する構想もある。2年後の運転開始を目標に、水戸岡氏も何パターンものアイデアを練っている。「また、いちばん過激な案が選ばれるんでしょうね」。

そして、両輪のもう一つである接客サービス。マニュアルどおりではなく、「どうすればお客様が喜ぶかを自分で考えてサービスを行う」と、客室乗務員の池本泰子さんは言う。

特筆すべきは、彼女たちはJR九州の社員(契約社員)であるという点だ。ほかのJRでは車内販売員はグループ企業に委託する例が多いが、本社採用だからこそ、乗り換え案内や切符の発券・確認、果ては車内清掃に至るまで、時間の許すかぎりあらゆる業務を行う。本社採用にしている理由を唐池恒二社長はこう説明する。「もしグループ会社に任せてしまったら、接客サービスはグループ会社がやることなんだと、本社の社員が錯覚しかねない」。

客室乗務員たちが率先してサービスを行う姿が、列車に乗務する運転士や車掌、行き来する駅の社員の目に留まる。「われわれも負けられない」。サービス強化の連鎖が、職種を超えて広がっている。

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