あの保険の加入基準が明確に示されない事情 引き受けを断られる病歴・通院歴とは?

拡大
縮小

記入項目は、クレジットカード番号まで入力するとことまで含めてA生保とほぼ同じ。ただ病歴に関する告知はA生保よりも詳細に報告を求められたように感じた。結果、B生保から連絡が来たのが2日後の火曜日10時ごろ。やはり引き受けは謝絶であったが、メールの文面はA生保よりも丁寧で「不明点があれば遠慮なくマイページからお問い合わせ下さい」と書いてあった。

早速マイページからメールで謝絶の詳細な理由を聞いたところ、当日中に返事が来て、「不整脈のご通院歴により誠に恐れながらお引き受けに至りませんでした。大変申し訳ございませんでした」とこちらが恐縮するぐらいの丁寧な返信であった。コールセンターに連絡をしても、同様に引き受けることができずに申し訳ないという気持ちが強く伝わり、好感を持った。A生保とは対応が対照的だったため、余計にそう思ったのかもしれない。

開業から急成長を遂げたネット生保は、近年新契約が伸び悩み、踊り場を迎えたと見られている。ただ、少なくともB生保に関しては、ネット生保の弱点とされる人を介した温かみのある対応を目指しているように感じられた。

たまたまネット生保の対応の違いを挙げたが、引き受け謝絶の理由を詳細に教えてくれる生保会社はほとんどない。たとえば、高血圧が謝絶の理由だったとして、「あと血圧を○○下げれば加入できますよ」などということは、引き受け基準の開示につながり、冒頭の逆選択を誘発することになるからだ。

ただ、顧客側からすると自分がどういう健康状態になったら保険に加入できるのかを知りたいと思うのは当然だろう。保険会社から謝絶の宣告を受けた顧客は、もしかしたらほかの会社で引き受けてくれるかもしれないのに、保険に加入することをあきらめてしまうかもしれない。

精神疾患の通院歴がある場合、加入できない恐れも

週刊東洋経済は7月11日号(6日発売)で『トクする保険 ソンする保険』という特集(全52ページ)を組んだ。本特集では、保険会社で最大のブラックボックスと言われる引き受け基準を、独自取材で一定程度明らかにし、病気別に死亡保険(定期・終身保険)、医療保険、がん保険に加入する際の基準の目安を一覧表にした。

ここからわかってくるのは、患者数が900万人にもいると推定される高血圧でも、血圧値が基準内にコントロールされていれば、たとえ服薬していても通常の保険に加入できる可能性があることなどだ。その一方、がん・脳卒中・心筋梗塞などいわゆる三大疾病と呼ばれる重大疾患の経験者は、通常の保険への加入が非常に困難だ。

あまり知られていないのは、うつや統合失調症など精神疾患に対する保険会社の対応の厳しさだ。近年ごく気軽にメンタルクリニックなどに通う風潮があるが、精神疾患で通院歴があると、通常の保険だけでなく、持病・既往症がある人専用の引き受け基準緩和型の保険にも加入できない恐れがある。

もちろん、病歴を隠して保険に加入することなど論外であり、告知義務違反は必ず露見するようになっている。ただ、保険会社の裁量と基準で一方的に「選択」されないように、自らの判断で保険会社と保険を正しく「選択」することを心がけたい。

高見 和也 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT