パレスチナ国家の国連加盟は実現するか

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1993年にイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間でオスロ合意が成立した。パレスチナ暫定自治政府を作り、その後、段階的にパレスチナ国家を作ることで、包括的な中東和平を実現する内容だった。だが、クリントン元大統領が斡旋した2000年のキャンプ・デービッド会談や、ジョージ・ブッシュ(子)元大統領が仲介した03年のオスロ合意実現へのロードマップなど国際社会の努力にもかかわらず、中東和平は一向に進んでいない。

最大の障害は、新しくできるパレスチナ国家の性格をイスラエルがどう考えるかだろう。

オスロ合意からキャンプ・デービッド会談までのイスラエルの構想は明白だった。イスラエルは、イスラエルの安全保障に脅威にならない、経済的にイスラエルに従属するパレスチナ国家を目指した。

アラファトPLO議長(故人)がイスラエル領内を通過する際、PLO内の和平反対派に暗殺されないように陰で護衛したのはイスラエル軍だった。「創生期のパレスチナ暫定自治政府に警察や軍隊を作るノウハウや武器を提供したのはイスラエル政府だった」(エリ・コーエン元駐日イスラエル大使)という。

アラファト議長をシンボルにしながら、政治的・経済的にイスラエルに従属せざるをえないパレスチナ国家の樹立という構想だった。

最大のヤマ場はクリントン元大統領、バラク元イスラエル首相、アラファト議長の3者が泊まり込みで交渉した、00年のキャンプ・デービッド会談だった。キャンプ・デービッド会談の内容は今でも秘密にされている。ただ、イスラエルからすれば、東エルサレムの一部と、西岸の大部分がパレスチナ国家に帰属するという「すべてのものを与えた」(コーエン元大使)と最大限の譲歩をした提案だった。

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