ビジネスや観光に一日当たり約42万人もの人々が利用する東海道新幹線。その日本の大動脈を支える運転士のひとり、千野聡子さん(34)は2人の子どもを育てるママだ。
ある金曜日の朝、乗務前にインタビューに応じてくれた千野さん。この日は午前11時30分からの勤務で、回送車両を基地まで輸送した後、新大阪までのぞみを運転し、そのまま大阪に泊まる。
東京に戻ってくるのは翌土曜日の朝だ。「朝9時17分に東京駅着の新幹線なんです。東京に着いたらさっと着替えて勤務を終え、そのまま帰宅せずに、家族とは八景島(神奈川県横浜市)のテーマパークで待ち合わせをしています。明日は丸一日遊ぶ予定なんですよ」と笑う。
運転士の仕事は必ず夜勤を伴い、出退勤の時刻は乗務する列車に合わせて分単位で毎日異なる。また地震や台風などの自然災害が発生すれば急な呼び出しもある。
「産育休から復職後は、当然のように運転士を続けることは難しいと考えていました」という千野さんだが、復職して2年、現在は仕事と子育ての両立ライフを心から楽しんでいるという。
新幹線夫婦に新婚生活はなかった
2001年にJR東海に入社した千野さんは、みどりの窓口や改札係など駅での勤務からそのキャリアをスタートさせた。
当時はまだ女性の運転士はいなかったが、やがて5つ上の先輩が同社初の女性運転士となったときに「目指していいんだな」と思ったという。その後、車掌を5年経験した頃に、同社内で新幹線運転士を務める夫と結婚。結婚式を挙げた1カ月後から、運転士としてのキャリアがスタートした。
新幹線運転士の夫婦に、新婚生活らしいものはなかった。お互いが4日勤務の後、2日あるいは1日の休みというパターンで働いていたため、1日でもずれるとなかなか顔を合わせる機会がない。
「一時期はジグソーパズルが夫婦のコミュニケーションになっていた時期がありました。不在時に帰宅すると、テーブルの上のパズルが進んでいる。これでお互いの無事を確認していました」
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