黒田日銀総裁と高橋是清の「類似点」とは? ストラテジストの市川眞一氏に聞く(後編)
英国総選挙、大阪市住民投票から分かること
――成長戦略、規制改革とも困難になってくるというお話でしたが、財政の健全化へ向けた財政諮問会議の議論も非常に悪い内容になってしまっています。
5月の英国の総選挙の結果を見て、日本の政治との大きな違いを感じた。保守党のキャメロン政権は、2010年5月に発足、翌年1月にVAT(付加価値税)の税率引き上げを実施したほか、教育を含めた大胆な歳出削減策を実施した。その過程で、チャールズ皇太子の乗車された車が、学費の値上げに反発した学生集団に取り囲まれる事件も起っている。当初は、こうした財政改革の実行で支持率は低迷したが、結果的に財政は大きく改善した。
ユーロ加盟国ではないため、欧州債務危機の影響が小さかったことも幸いしたが、財政の健全化により、BOE(イングランド銀行)があまり無理な政策を実施しなくても、市場金利があまり上がらなかったことが大きい。さらに、中東やロシアからオイルマネーが国際金融都市ロンドンへ流入して2013年頃から景気が回復し、今年の総選挙における政権与党の地滑り的大勝につながったのではないか。
ポイントは、政権発足当初にやるべきことをやったということだ。英国の総選挙は基本的に5年に一回なので、政策の実施に向け計画が立てやすいことも指摘できる。
ところが、日本の場合、衆議院は任期4年だが、常在戦場といわれる通り、解散のタイミングは読めない。内閣総理大臣は、自分に都合の良い時を選んで国民に信を問えるものの、3年に一回の参議院選挙にも配慮する必要がある。参議院で与党が過半数割れした場合、国会運営がより困難になるからだ。
長期政権を目指すには、常に景気に配慮しなければならず、結果として国民に痛みを伴う政策は先送りされがちだ。
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