「アンチヒーロー」ヒットを予感させる3つの要因 随所に注目ポイントが散らばっている

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初回のクライマックス、冒頭と同じシーンに戻って明墨が「人、殺してるんですから」と緋山に語りかけたとき、ガラスに明墨が映って緋山と重なっている。どこか暗喩的な気になる画であった。

緋山がどういう人物なのか、無表情で言葉少なく、わからないところが面白く、初回で1話完結にしないで2話に引っ張ったことは作戦であろう。

一時期、各話完結が見やすいと好まれていたが、昨今は配信されることも考慮に入れてか、あとを引く終わり方が増えてきている。配信では、続きをどんどん見たくなることが大事なので、区切りなく続いていくもののほうがいいのである。元来、連続ドラマは週刊連載漫画のように続きが気になるものを作ってきたので、いい原点回帰になっているのではないか。ただ『アンチヒーロー』が第3話以降も1話完結にならないかは不明だが。

ネットも注目「長谷川博己Vs.野村萬斎」

さて。初回、終盤、野村萬斎演じる東京地検トップの検事正・伊達原泰輔が「日本という国は罪を犯した者がやり直せる国」と明墨と真逆のことを未来あるこどもたちに語っていた。

この伊達原と明墨が最終的に対峙するのではないかと世間では注目されている。『シン・ゴジラ』(2016年)対決(ゴジラの中の人だった野村とゴジラと戦う内閣官房副長官役の長谷川)になると話題だ。

野村と長谷川の共演作で印象的なのは、野村が尾上菊之助とW主演した舞台『わが魂は輝く水なり』(2008年)である。この舞台に参加した長谷川は、それまで演じたことのなかった喜劇調の演技にトライして好評を得た。いま長谷川がテレビで愛されるシュッとしてかっこいいだけでなく、どこかおもしろい面を作りあげた作品で共演した、長谷川博己と野村萬斎の演技対決に期待したいのだ。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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