「アンチヒーロー」ヒットを予感させる3つの要因 随所に注目ポイントが散らばっている

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緋山を有罪にする証拠は多く集まっていたが、明墨は違法スレスレのやり方で証拠を潰していく。明墨のキャラ紹介でもある初回としては十分すぎるほど、彼の鮮やかな仕事っぷりが連なっていく。

たとえ悪事でも躊躇なく弁護するキャラクターの先行として、『VIVANT』の堺雅人が演じた、人気ドラマ『リーガルハイ』シリーズ(2012〜2014年 フジテレビ)の古美門研介を思い出したドラマファンも少なくなかったようだ。

「正義は特撮ヒーローものと『少年ジャンプ』の中にしかないものと思え。自らの依頼人の利益のためだけに全力を尽くして闘う。我々弁護士にできるのはそれだけであり、それ以上のことをするべきではない。わかったか、朝ドラ!」という名言をはじめとして、古美門は世のなかを鋭く突いた数々の名言を発し、お金になる訴訟事件の弁護を引き受けて勝ち続けていた。明墨もそうなのかと思えば、たぶん、そうではないだろう。

「アンチヒーロー」とはどういう意味なのか

日曜劇場という枠からして、おそらく、ヒューマニズムを担保するはずだ。『VIVANT』だって堺演じる主人公が第4話でむごい処刑を行ってざわつかせたが、後半、役所広司演じる父とのヒューマニズムあふれる関係が視聴者をホッとさせたものである。

『アンチヒーロー』も初回の終盤、刑務所に入った謎の男(緒形直人)が現れ、明墨と何か関係があることを匂わせている。

また、miletの歌う主題歌『hanataba』が歌詞を読むとラブソングのようであることからも明墨のダークっぷりはつかみであって、ヒーローとは、正義とは何かを問い直すことに力点が置かれると推察できる。

「アンチ(反)」という言葉は昔からあるが、SNSの時代、何かを批判する層が「アンチ」と呼ばれネットミーム化している。そのため親しみやすいワードになった反面、どこか悪い印象もつきまとう。『アンチヒーロー』の場合、従来の、類型的なヒーロー像とは違うという意味合いと、ネットミーム的な猥雑な印象によって、いい意味でつかみどころのない、多彩な像が結べるタイトルになったといえるだろう。

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