BEV販売に急ブレーキ!新たな局面を迎えた中国 存在感増すスマートカーとファーウェイ系NEV

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この新たなプラットフォームを「問界(セレス生産)」「智界(奇瑞汽車生産)」「傲界(JAC生産)」「享界(北京汽車生産)」などに供給し、自動車メーカーと共同開発車事業を加速している。

中でも問界の販売台数は2024年1~3月に8.2万台を記録しており、中国新エネルギー車(NEV)メーカーの第6位に躍進した。

BEVシフトにともなうアーキテクチャーが変化するなか、コネクテッドカーとスマートデバイスおよびアプリとの相性が良いため、各社が違うコンセプトでルールチェンジされた新たな口火を切った形だ。今後は、ファーウェイ系NEVが大幅に増加すると予測される。

中国市場への対応力がグローバルでの競争力になる

最後に日系メーカーについても、触れておこう。2024年1~3月の日系自動車大手3社の中国販売台数は、ホンダが前年同期比6.1%減の20.6万台、トヨタが1.5%減の37.4万台、日産が3.3%増の16.7万台だった。

3社とも低迷しているのは、中国市場ではNEVやエンジン車といったパワートレインに関係なく、価格競争の波が押し寄せてきている中で、値引きへの期待感から消費者の買い控えが起きているためだ。

一方で、日系メーカーはハイブリッド車(HEV)を数多くラインナップする優位性を生かし、多様な需要に取り組んでいるため、2024年1~3月の中国HEV市場で85%のシェアを占めている。このこともあり、トヨタの新車販売に占める電動車(HEV、PHEV、BEVの割合)は42.3%に達した。

2024年4月16日に発表したホンダの中国向け次世代EV「烨シリーズ」(写真:本田技研工業)
2024年4月16日に発表したホンダの中国向け次世代EV「烨シリーズ」(写真:本田技研工業)

現在、中国BEV市場での日系車のシェアは、1%にとどまっている。冒頭で述べたように、BEVの一時的減速でひと息つくのではなく、BEVの競争力を確立しなければ、グローバル事業を痛める可能性もある。ソフトウェアを含め、コネクテッド機能を備えるBEVの開発スピードを上げる必要があるだろう。

現時点で、戦国時代といわれるグローバルでのBEV市場では、レガシー自動車メーカーのシェアも低く、ソフトウェアやスマートキャビンなど寡占するBEVメガサプライヤーも登場していない。

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ここで日本企業が、中国企業や中国のBEVサプライチェーンを活用して、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル=ソフトウェア定義車両)化を進めながら、電池・インフォテインメント・自動運転機能技術を高めていく手はある。

先行きに不安を残すガソリン車に比べ、SDVの存在感が増していくことは間違いない。このタイミングで日系メーカーが中国の電動化需要に対応することができれば、グローバル市場で勝ち抜く可能性はあるはずだ。

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湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国自動車業界のネットワークを活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。大学で日中産業経済の講義も行う。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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