有料会員限定

多元化外交と海峡管理、トルコの地政学的強み 西側、ロシア、イスラムと強固な外交関係

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
拡大
縮小

ウクライナ戦争により、トルコの多角化外交と地政学的位置が重要になってきている。

トルコ共和国のエルドアン大統領
注目集めるエルドアン大統領の外交手腕(写真:Getty Images)

特集「わかる! 地政学」の他の記事を読む

ウクライナ、イスラエルとガザ、台湾有事、朝鮮半島の緊張…… 世界が混迷を極める中、「地政学」は地理と歴史の観点から、国際情勢の読み解き方を教えてくれる。『週刊東洋経済』4月20日号の第1特集は「わかる! 地政学」。地政学がわかると世界の仕組みが見えてくる!
週刊東洋経済 2024年4/20号[雑誌]
『週刊東洋経済 2024年4/20号[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

ウクライナ戦争でトルコは国際社会の注目を集めた。戦争勃発直後に、トルコはウクライナとロシアとの会談の場を設定した。また、ウクライナの穀物輸出回廊の取り決めを国連と仲介した。両国の捕虜交換にも関与した。

そんなトルコの狙いは何か。その答えのカギは、トルコがエルドアン政権下で進めた外交の多元化と、トルコの地政学的条件にある。

トルコ国土のうち欧州側は3%にすぎず、97%はアジア側にある。また人口の9割以上はイスラム教徒だ。

人口・地理的には非欧州であるにもかかわらず、トルコ共和国は1923年の建国以来、国家発展のために政治経済制度の欧州化を目指してきた。

キプロス問題をめぐりEUと対立

対外的にも第2次世界大戦後、欧州評議会(CoE)、北大西洋条約機構(NATO)にそれぞれ加盟。欧州連合(EU)の前身である欧州経済共同体(EEC)に準加盟したことで民主主義、軍事、経済の面で欧州との関係が築かれた。2005年にEU加盟交渉を開始したが、その交渉は06年末に部分凍結された。最大の原因は、キプロス問題をめぐるEUとトルコの対立にあった。

EU加盟の行き詰まりは、多元外交に道を開いた。すなわち、与党の公正発展党(AKP)は従来の欧米一辺倒な外交を見直し、冷戦構造下で疎遠となっていた近隣の中東やコーカサス、バルカン諸国との関係を強化し、中東域内の紛争調停にも関与した。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
わかる! 地政学
国際情勢の解像度が上がる 「わかる! 地政学」
ウクライナ、米中、台湾… 地政学で理解する
"禁断の学問"がなぜ21世紀に有効なのか
エネルギーを海外に頼る日本には弱点がある
神奈川大学の的場昭弘名誉教授が徹底解説
トランプ外交が起こす波紋、関係国は大混乱
原潜が航行する「南シナ海」こそ最重要の海域
元外交官がロシアの地政学的空間を解説
ウクライナ戦争は終結する?西側は支援疲れ?
西側、ロシア、イスラムと強固な外交関係
グローバルサウスの盟主は世界のグルを目指す
通年航行が可能になれば、インパクトは強大
巨額の財政支援が世界各国の投資を呼び込む
インフラ投資が伸びているアメリカで販売増
トランプ勝利だと脱炭素政策はどうなるか
コロナ禍を経て、供給リスクに備え始めた
規制強化に反スパイ法、中国リスクが顕在化
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内