「キョン」が千葉・房総半島で大繁殖、その脅威 「防衛ライン」で茨城県への北上をはばめるか

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千葉県も今年度から、県の事業で捕獲したキョンの肉や加工品、革製品をふるさと納税の返礼品として用意するなど、活用に力を入れ始めた。

茨城県にも迫る

房総半島内で、拡大を続けてきたキョン。

千葉県は21年度に、半島中央部の東西に位置する一宮町と市原市を結んだ「分布拡大防止ライン」を設定。キョンの北上をはばむ「防衛ライン」として、この付近での捕獲を集中的に進めている。

しかし、すでに県北部の成田市や柏市の周辺でも、キョンの目撃は相次いでいる。県自然保護課の市原岳人副課長は、

「ラインの北側に、キョンの生息域は広がっていないと認識しています」

と説明する。「防衛ライン」を越えて確認されているのはオスばかりで、メスは目撃されていないためだ。キョンは群れをつくらずに単独で行動することが多く、さらにオスはメスよりも行動範囲が広いと考えられている。

一方、さらに北側の茨城県では昨年12月、利根川を越えた下妻市でキョンの死がいが見つかった。22年に石岡市、23年にも筑西市でも確認されており、県内で4例目となる。すべてオスだという。

茨城県環境政策課の飯村勝輝課長補佐は、

「対岸の火事どころではない状況です。かなりの危機感を持って対応を考えています」

と話す。来月には有害鳥獣の捕獲対象にキョンを追加し、自治体で駆除ができるようにするという。

房総半島で被害を増大させながら、生息域を拡大してきたキョン。

今後、半島内の「防衛ライン」を突破し、さらに利根川も越えてしまえば、もうだれも止められない――。「脅威」が、静かに広がっている。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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