日本の司法はおかしい、だから闘い続ける

周防正行監督に裁判の問題点を聞く

日本の刑事司法のあり方に異議を唱えた映画監督の周防正行氏(撮影:大澤 誠)
痴漢えん罪事件を描いた映画「それでもボクはやってない」(2007年1月公開)で、日本の刑事司法のあり方に異議を唱えた映画監督の周防正行氏。その周防監督が、法制審議会の委員として活動した3年間の軌跡をつづった「それでもボクは会議で闘う」(岩波書店)を上梓した。発売1カ月で増刷が決まるなど、売れ行きは上々だが、それ以上に、審議会に於ける周防氏の“闘いぶり”に対する専門家の評価は高い。
周防監督が委員となった審議会は、「新時代の刑事司法制度特別部会」という。2009年に厚生労働省社会・支援局障害保険福祉部企画課長だった村木厚子氏が、いわゆる「凛の会事件」で逮捕、起訴され、その課程で大阪地検特捜部による強引な見込み捜査、証拠改ざん、隠ぺいなどが明かになり、検察への信頼を根底から覆した。
その反省から、取り調べ供述調書に過度に依存した捜査・公判のあり方を抜本的に見直し、制度としての取り調べの可視化を含む、新たな刑事司法制度を構築するために、民主党政権下の2011年6月に発足した審議会である。
発足から3年後の2014年7月にこの審議会は答申を取りまとめ、それに基づいて作成された刑事訴訟法の改正案が今国会に提出され、現在審理待ちの状態になっている。
審議会のメンバーは総勢42名。一般有識者も周防氏や村木氏など7名が選ばれたが、警察、法務省関係者が14名、裁判所関係者が4名、内閣法制局から1名、学者11名に弁護士5名という構成だった。
警察と法務省、裁判所だけで18名、学者の大半が権力側の御用学者。従来的な取り調べ手法に肯定的な顔ぶれが全体の6割以上を占め、周防氏にメンバー表を見せられた某法曹関係者が「絶望的なメンバー」と言い切るほど。周防氏にとってはまさに多勢に無勢の状況下での闘いとなった。

刑事司法のあまりのひどさに愕然

――法制審の委員には、日本弁護士連合会に割り当てられた推薦枠でなられたそうですね。

「それでもボクはやってない」でお世話になった弁護士の方からお話をいただきました。

――「それでもボクはやってない」は、3年半に及ぶ徹底取材を元に制作されたそうですね。刑事裁判を200回以上傍聴され、弁護団会議や勉強会に出席されたり、数百冊もの法律書も読破されたとのことですが、そこまでのめり込んだ理由は何だったのでしょうか。

最初のきっかけは、痴漢事件で逆転無罪の判決が出た、という新聞記事でした。家族や友人が、被告人、弁護士と一緒に闘ってようやく得た無罪。言ってみれば素人が未知の世界で頑張ったというのが第一印象で、従来の私の映画のテーマに近かった。そこで取材を始めてみたところ、刑事司法の現状のあまりのひどさにショックを受けたんです。世の中でえん罪が起きていることは知ってはいましたが、人が人を裁く以上、どこかで人としての限界があって、ぎりぎりのところで生まれてしまう、防ぎきれない事故のようなものだと思っていたんです。でも実際には全然違って、起こるべくして起こっている。

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