規模を狙うコニカミノルタ、大胆な「戦略転換」の真意

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「やったな」。今年4月、東京・大手町にあるコニカミノルタ本社は沸いた。自動車大手の独BMWから、事務機の運営業務を受託したのだ。

総額30億円(推計)と、コニカミノルタでは過去最大級の案件。BMWの独本社や欧州工場などに、合計6800台の複合機を新規導入する。運営管理業務を通じ、今後3年をかけて、他社製品をすべてコニカミノルタ製に置き換える算段だ。

このような運営受託などサービス業の強化を、コニカミノルタは新中計の軸に据えている。「事務機業界はこれまで、販売を主体とする『体育会系』の体力勝負だった。が、サービス業が主流となる今後は『知恵とフットワーク』の勝負になる」と、松崎社長は強調する。

近年は企業のコスト意識の高まりから、事務機の販売が世界的に伸び悩んでいる。一方で、「MPS」と呼ばれる運営受託サービスの需要が拡大。機器の再配置やプリント環境の効率化などを通じて、企業の印刷コスト削減を実現するサービスだ。

BMWのケースが示すとおり、MPS争奪戦は勢力図を変えるインパクトを秘める。顧客の全拠点の機器を一括受託するため、競合案件をごっそりと奪えることもあれば、逆に一瞬にして失うリスクもある。複合機を主柱とするコニカミノルタにとって、サービス業を制するか否かは、成長戦略を大きく左右するのだ。

ところが、MPSでは米ゼロックスが牙城を築く。世界160カ国の営業・サービス拠点を橋頭堡に、世界シェア48%と圧倒的。シェア13%のリコーも180カ国の販売網をフル活用し、ゼロックスに挑んでいる。こうしたライバル企業に対して、コニカミノルタの販売網は世界70カ国。シェアは3%以下。まともに太刀打ちできないのではないか。

「本丸」は中小企業 カスタマイズで差別化

冷ややかな見方に対し、松崎社長は「ライバルのMPSとわれわれのサービス業とは、似て非なるものだ」と、意に介さない。

この言葉の意味は、標的としている顧客を見ればわかる。ゼロックスは大手企業への提案を中心に展開しているが、コニカミノルタは、ライバルが手薄な中小・零細企業を攻略の「本丸」と位置づける。最大市場の米国では、社員1000人以上の大企業は約9000社だが、それ以下の中小・零細企業は600万社以上。裾野がグッと広がる。

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