「友だちの輪」誕生のきっかけにあの世界的巨匠 ハプニングの宝庫「笑っていいとも!」の魅力

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このエピソードからは、とっさに坂本の真似をし、さらに観客との「コール&レスポンス」に持っていったタモリの反射神経と嗅覚の鋭さが光る。

その場のノリを敏感に感じ取り、ひとつの遊びのかたちに持っていく。でたらめ外国語やイグアナの物真似など怪しげな芸を連発し「密室芸人」と呼ばれた時代、あるいはそれ以前からタモリが培ってきた資質である。

ただこの場合、観客の当意即妙さも見逃せない。坂本龍一とタモリが輪のポーズをしたときに、即座に観客が「輪!」とかぶせなければ、「友だちの輪」は生まれなかったに違いない。

隙あらば参加してやろうという観客の前のめりの姿勢、積極さが、このフレーズを生んだのである。その意味で、「友だちの輪」は、タモリと観客の一種の共同作業によって生まれたものだった。

このようなことが起こり得たのは、『いいとも!』という番組そのものが、ハプニングの起こりやすい雰囲気を持っていたからだろう。

『いいとも!』では、リハーサルはほとんどなく、ぶっつけ本番だった。番組前のタモリは、段取りの確認なども他人に任せ、ずっとスタッフと雑談をしていたという。一見お気楽にも思われるが、それは、あらゆる面において安易な予定調和を嫌うタモリとスタッフのポリシーの表れでもあったはずだ。

ハプニングの宝庫

「テレフォンショッキング」は、『いいとも!』という番組を貫くそんな〝反-予定調和〟の精神を象徴するコーナーだった。

もちろんそこには、芸能人や著名人の意外な交友関係がわかるという楽しみもあった。出演を祝って電報が届いたり、大きな花輪が贈られたりする。

その飾られた花をタモリが「○○さんから届いてます」というように目についた贈り主にふれることもある。そうでなくとも、画面に映る花を見て誰から届いているのかを見るのも、視聴者の楽しみのひとつだった。

また、電話をかけた先が仕事の現場であったりすると、そこに居合わせた共演者が電話口に出て仲の良さが垣間見えたりするのも、ちょっと得した気分になった。

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