アドラー『嫌われる勇気』で生じた2つの「誤解」 「トラウマは存在しない」説と「課題の分離」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
拡大
縮小

たしかに対人関係で、相手の態度に一喜一憂してしまうと、ふりまわされることになります。

相手には相手の考えがある。相手には相手の受け取り方がある。

そうとらえて、気にしすぎないことは大切です。

また、「相手の問題・課題なのだから」と考えると、相手の顔色を気にしすぎずに、自分らしく振る舞い、発言することもできます。

そのため、「人間関係が楽になった」「嫌われる勇気をもつと、人の顔色を気にしないで自分らしくいられる」などと助けになった人も多いことでしょう。これはこれで、大切なことと思います。

ただ、「課題の分離」は、人間関係に悩む人の「最終解決策」ではないのです。

親子の関係を例に

例えば、親子の関係です。親が「部屋を片付けてほしい」と言ったところ、子どもが不機嫌になったとします。

子どもが不機嫌なのは、子どもの課題です。子どもが「部屋を片付けない」のも子どもの課題です。

けれどもこのときに課題の分離をして、親が子どもに対し、「私は『部屋を片付けてほしい』と思っているが、その思いをどう受け取り、行動するかはあなたの課題であり、私の課題ではない」というスタンスをとったとします。

「これはあなたの課題です。私の課題ではありません」ということです。けれどもそこで終わると、親の心は楽になっても、子どものほうは突き放されたように思うことがあります。

子どもが「自分は大事にされてない」と感じたりするのです。

ですから、「部屋を片付けてほしい」と提案し、最終的に片付けるかどうかは「子どもの課題」ではあるけれど、「一緒に考えよう」と「共同の課題」を設定するのです。

この「共同の課題」を設定することが、人間関係に悩む人にとっての最終解決策であり、とても大切なポイントです。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT