ブラタモリ終了、たけし卒業にプラスしかない理由 昭和の大物司会者たちはいかに最後を飾るか

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番組が終了すれば別の番組を始め、司会のポストが空けば別の人物を起用して活性化させる。長きにわたってメディアのトップに君臨してきたからか、テレビはそんな当たり前の新陳代謝が大の苦手。これまでは目先の視聴率獲得が求められるうえに、芸能事務所とのつき合いもあって、新たな番組やスターを育成することに消極的でした。だからこそ世代交代が加速した現在の状況は、「やっと業界をあげて前に進める」「今こそ再びテレビに注目を集めるセカンドチャンス」という感があるのです。

その点、見る側の私たちにとって大物司会者を見る機会の減少は寂しさこそあるものの、別の番組や新たなスターを楽しむチャンスがあるということ。もしテレビ局が大物司会者を外しただけで世代交代や番組と司会者の育成を躊躇していたら、声をあげて背中を押すくらいの姿勢を見せていいのかもしれません。

惜しまれながら終了したブラタモリ。「敦賀〜すべての道は敦賀に通ず?〜」編も印象的だった(写真:「ブラタモリ」サイトより)

テレビ業界にとって大物司会者が相次いで去る今春は、2010年代の苦しい時期を経てようやく訪れたセカンドチャンス。人々にテレビ局の企画・制作力を示すような番組を手がけ、その象徴として新たな司会者を据えて育てていけたら、視聴率・配信再生数ともに一定以上の結果が得られるのではないでしょうか。

逆にここで目先の視聴率を獲るために、どこかで見たような横並びの番組ばかりを作っていたら、「やっぱりテレビはつまらなくなった」と言われかねません。1つの節目だけに、人々の印象をどう変えていけるかが問われているのです。

「ロス」を呼ばない大物の去り際

そしてもう1つ、テレビの印象を左右しそうなのは、大物司会者たちの去り際。テレビを象徴する大物司会者だからこそ、「どのように次の番組や司会者にバトンを渡すか」によって、テレビそのものの印象を左右しかねないのです。

その点、「ブラタモリ」のレギュラー最終回は「鹿児島・指宿」でしたが、タモリさんのコメントどころか番組のテロップなどもなく、すべてがいつも通りのまま終了。これは「特番での復活という可能性がある」にしても、“いつも通り”というタモリさんらしい去り際であり、大物司会者らしさを感じさせました。

一方、「アンビリーバボー」は今春で同じくMCを卒業する剛力彩芽さんの11年半を振り返るVTRとコメントを流しましたが、ビートたけしさんのそれらはなし。26年半もの長期にわたって出演し続けたにもかかわらず、タモリさん同様に「黙って番組を去る」というスタンスに気づかされます。

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