「ゴミ屋敷に住むシングルマザー」悩み消えた瞬間 片付けの現場では何が起こっているのか?

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「転職して1年ぐらい経ったのでちょっと心身ともに落ち着いたんです。仕事もずっとハードで腰も2回いわしたんですけど、収入的にも精神的にも落ち着いてきた。お金的に余裕ができたら、精神的にも余裕が生まれてきたんです。夏のボーナスも出たので、一掃するなら今やなと」(母親)

生活スペース(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

テキパキと仕分けをする「片付けられない母親」

現場に入ったスタッフは計5人。母親と一緒に、いるモノといらないモノを仕分けしながらの作業になるので、片付けの終了予定は少し長めの5時間だ。

「椅子の上の書類は?」
「書類はほとんどいらないです」

スタッフが母親に確認しながら片付けを始めると、さっきまで「グータラなので」と自分を卑下していた母親がテキパキと仕分けをしている。とても片付けられない人には見えない作業のスピードだ。ただ、二見氏によれば、ゴミ屋敷の片付けの現場ではよくある光景だという。

「片付けに悩まれている方って、仕分けする→袋にまとめる→ゴミの日を把握する→ゴミ捨て場まで行く→残ったモノを整理する…という一連の流れを考えてしまうと気が重くなってしまうんですよ。だから、できない。でも、僕らみたいな業者が入ることによって最初の仕分けだけをすればいい状況になります。そうすると、一気に気が楽になってすごいスピードで片付けられるようになるんです」

依頼者と仕分けを進める(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

キッチン、リビング、寝室と、まずは母親がいるモノだけをピックアップして箱や袋に詰めていく。その後、残ったいらないモノをスタッフたちが外に運び出していく。すると、あっという間に部屋は見違えるように過ごしやすい空間へ生まれ変わった。

片付け後の様子(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
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「満足度は100%です。年1回くらい呼びたい。私みたいに悩んでいる人は誰かに部屋を見てもらうのも嫌やと思うんですけど、相談だけでもいいから恥さらして見てもらったほうがいい。私もやっぱよう言わんくて、親に見せても“片付けなさい”としか言われへんし、どうしたらいいのって途方にくれていたんです。そう悩んでいる人っていっぱいいると思うんですよ。1人で住んでいた期間も10年あって、24年分の過去がすべてスッキリしました。娘と2人で頑張っていきます」

「一歩踏み出してよかった」と母親は噛みしめるように言った。清掃業者に電話をするというひとつの行動で、長年悩み続けていたことがたったの半日で解決した瞬間だった。

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國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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