「数値化こそ正義」と信じる人が大抵陥る落とし穴 なぜ数値化ができても行動を変えられないのか

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ある有名なYouTubeのコンサルタントは、クライアントに対して「徹底的に数字だけで判断すること」を強く指導するそうです。「好意的なコメントがあった」「見栄えがいい」といった定性的なことはまったく参考にならない。とにかく数字がもっとも正直であり、数字がすべてだと。

数値化することで成果につなげたいなら、数字の情報は絶対です。そこから逃げることは許されません。その覚悟がないなら数値化する意味はゼロであり、最初から数値化などしなければよいのです。

あなたも仕事において数値化の必要性を感じたとき、先ほどの質問をぜひ自分自身に問いかけてみてください

表面的には当たり前のことを尋ねる問いに見えるかもしれませんが、いざ自分の仕事において問われると、ズッシリと重みを感じる質問であることがわかるはずです。

成果を出すには、まず「ハラを括る」

数値化についての話題は、「技術論」に進みがちです。実際、企業研修などの場でも「どうすれば数値化できるでしょうか?」という類の質問が圧倒的に多いのです。

しかし、そのような技術論ばかりを求めるビジネスパーソンには、少しだけ警笛を鳴らしたいとも思っています。技術論ばかり学ぼうとするその姿勢は、「覚悟」という心の問題をごまかすことになっていませんか、と。

それはまるで「転職本」を読み漁るだけでいつまでも行動しない人に似ています。なぜ行動できないかというと、転職したいと心から思っていないからです。ハラを括っていないからです。

仕事柄、私はこれまでたくさんの「数値化」というテーマでの評論を見聞きしてきました。そのどれもが素晴らしいノウハウを提示しているものです。しかしながらそれらはすべて技術論であり、この記事のように精神論の観点で論じられているものに出会ったことがありません。

精神論をバカにする人も一定数いるようですが、健全な精神なくして技術も何もないのです。技術論よりも前に精神論。結局、ビジネスはハラを括っている人でないと成果が出ない世界です。

「数値化しよう」と言うだけなら誰でもできます。とても便利な言葉だと思います。だからこそあなたはこの言葉を使うに値するビジネスパーソンか、自問自答してはいかがでしょうか。

あなたは本当に数値化したいと心から思っていますか? 

そして実際の数値を見て、素直に行動しますか?

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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