JR東日本、「品川再開発」には不安がいっぱい 13万平米の大型事業に不可欠な要素とは?

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どこに道路を設定するかといった東京都が策定する都市計画に合わせて、再開発構想を具体化していきたいというのがJR東日本のスタンス。建前論としては正しい。ただ、現実論としてはどうか。「大規模再開発は、民間が行政のやるべき分野まで肩代わりするほうがスピードは速い」と、ある政令指定都市の都市開発担当者は語る。相手の出方を待っていては、再開発は進まない。

京急や西武との連携も不可欠

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品川駅西側では、京急や西武が不動産を保有している

今までの駅再開発とは違い、品川再開発にかかわる事業者がJR東日本単独ということはない。鉄道事業者だけを見ても、京浜急行電鉄や西武ホールディングスは品川駅周辺に広大な不動産を所有する。

京急は品川駅前の複合施設「SHINAGAWA GOOS」に加え、品川駅や泉岳寺駅の周辺に賃貸ビル8棟を保有。すべて合わせると6万平方メートルの規模となる。特に、JR東日本の土地と国道15号に挟まれた細長い土地の多くは京急が保有しており、JRと京急の連携は不可欠だ。

西武も品川駅の西側、高輪地区にプリンスホテルをはじめとした広大な不動産を有している。東京オリンピックまではホテル稼働を優先するが、オリンピック後は再開発に踏み出す可能性もある。いずれにせよ、JR東日本の計画が明らかにならないと、動きが取りにくい立場にある。

再開発予定地周辺では、すでに複数の再開発プロジェクトが動いている。5月28日には、品川新駅予定地の線路を挟んだ東側に大型複合ビル「品川シーズンテラス」がオープンした。都が管理する「芝浦水再生センター」の広大な上部空間を有効利用し、NTT都市開発など4社がオフィス、コンファレンスホール、レストランから構成される複合ビルを建設した。ビル周辺には広大な緑地も広がり、都民の憩いの場として活用が期待されるが、そのスペースと新駅はどのように連携をとるのか。

2015年度中には、田町駅周辺で東京ガス、三井不動産、三菱地所が共同開発する「TGMM芝浦プロジェクト」が動きだす。2棟のオフィスビルとホテルから構成され、2019年度の竣工を目指す。ここと品川再開発との連携も明らかではない。

そもそも品川再開発自体、これだけ規模が大きいにもかかわらず、現時点でJR東日本がほかの事業者と連携する動きは見えない。計画を誤ると、市川氏が言う「失敗した再開発」の二の舞いになりかねない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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