台湾有事は避けられるか「百害あって一利なし」 「現状維持」を望む台湾の人々が大多数の現実

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台湾国旗
懸念される台湾有事の行方は?(写真:Atzsuo / PIXTA)
懸念される「台湾有事」だが、「大陸中国と台湾は分業などで極めて親密な相互依存関係があり、手を取り合って発展してきた。台湾の人々は中国との関係は保ちたいが、統一して言論の自由が損なわれるのもうれしくないから、台湾当局の世論調査では"現状維持"を望む人が86.3%もいる」、そう解説するのは軍事評論家の田岡俊次氏だ。
田岡氏が「百害あって一利もない戦争」だという台湾有事について、田岡氏の著書『台湾有事 日本の選択』から一部を抜粋し、前後編にわたって考えていく。

台湾と中国は親密な相互依存関係

アメリカと日本の反中国派の中には、中国と台湾は韓国と北朝鮮や、かつての東西ドイツのような分裂国家で敵対関係にあるように思っている人も少なくないようだ。

だが、大局から見れば中華人民共和国と中華民国(台湾)は極めて親密な相互依存関係にあり、手を取り合うことにより、この20年以上、目覚ましい発展を遂げた。

中国は2002年から22年の間に名目GDPが1兆4658億2900万ドルから18兆1000億4400万ドルと、12.3倍になった。

もとから1人当たりのGDPが中国の12倍あった台湾も、同じ20年間に名目GDPが3074億3900万ドルから7616億9100万ドルと、2.5倍になった。

経済的にはすでに一体化に近い状態だ。

2021年の台湾の輸出の28.2%(1259億300万ドル)は中国向け、香港向けが14.1%(629億7400万ドル)だから合計42.3%になる。

アメリカ向けは14.7%(656億8600万ドル)だった。

台湾の輸入は2021年で中国からが21.6%(824億7200万ドル)、日本からが14.7%(561億300万ドル)、アメリカからは10.3%(391億4000万ドル)だ。

台湾の輸出品目の35.4%(1230億6000万ドル)は集積回路、通信機器が4.8%(165億6300万ドル)で(いずれも2020年)、中国にとり台湾からの部品輸入は不可欠だ。

大陸に進出している台湾企業は約2万8000社と言われ、2010年代(10年間)の海外投資の50.9%、香港の2.4%を加えると53.3%になる。

かつては70%だったが中国の人件費や地価が高くなり、東南アジアへの投資が増えたとはいえ、アメリカへの投資は4.7%、日本へは4.4%であるのと比べれば、なお台湾の大陸への投資は圧倒的に大きい。

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