清水建設「女子社員の寝坊で炎上」に潜むギャップ 動画をしっかり見ると印象も変わるが…

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報道と温度差の2要素によって、世間とのギャップが可視化される。ガイアをめぐっては、こうしたケースが珍しくない。

有名なのが2017年に紹介された、キリンビール社内の飲み会だ。販路拡大を求められる営業担当者が、先輩の説教に涙する様子に「パワハラではないか」との指摘が相次いだ。

営業部隊には、一般的に体育会系のイメージがある。また、キリン回が放送された6年前であれば、いまほどハラスメント意識は高くなかった。それでもパワハラだと受け取られ、炎上してしまったのは「カメラを通すと、どう見えるか」を予測できていなかったことに他ならない。

ガイアや、姉妹番組といえる「日経スペシャル カンブリア宮殿」などの経済ドキュメンタリーは、会社ごとに異なる企業風土を「社員・経営者のふるまい」から浮き彫りにして、それぞれの「社内での当たり前」と一般常識をすりあわせることで、面白みが出てくる番組スタイルだ。

毎週のようにSNSで話題になる「ザ・ノンフィクション」(フジテレビ系)も、取材対象がビジネスパーソンかどうかの区別はあるが、ガイアと同じ構図だ。登場人物と世間とのギャップをつぶさにとらえ、ドキュメンタリーとしてコンテンツ化することで、人気番組になっている。

とはいえ、筆者は別に「世間とのギャップ」を否定したいわけではない。とくに経済界においては、むしろギャップがあるからこそ、そこに商機が生まれる。常識にとらわれず、トガっている企業でないと、高みを目指すのは難しいだろう。

一般社会との温度差を認識できているか

ただ、その際にカギを握るのは、一般社会との温度差を認識できているかだ。自覚したうえで、客観的な見られ方を考慮しつつ、あえて我が道を行くのであれば、それはそれでアリだ。

しかし、無関心なまま向き合わなかったり、気づいていても対策をとらなかったりすると、いざという時に、どこから石を投げられるかわからない。

一般論として、社内における「べき」論が強くなればなるほど、組織としての結束は高まる。社訓なり服務規定なりを設けて、それに沿って従業員が動けば、企業風土の定着も図れるだろう。だが、ひとたび「井の中の蛙」になってしまえば、世間とのギャップが落とし穴になる。

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