日本株上昇で最も「得をしている」のは誰なのか 企業が余剰資金を突っ込む株価上昇のカラクリ

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計算が簡単なので20倍を例にしてみよう。1億円の利益があり、100万株を発行しているとすると、1株当たりの利益は100円である。PERが20倍の場合、株価は2000円となる。

1株当たりの純利益が2倍になれば、株価も2倍になるはずだ。1億円の利益を2億円に倍増させるという難しい方法もあるが、日本企業はより「安易な」方法を選んだ。すなわち、余剰資金を使って過去最高水準の自己株買いをしたわけだ。

仮に企業が半分買ったとしよう。その場合、同じ1億円の利益を50万株で分け合うことになり、1株当たりの利益は200円になる。

企業が自己株買いに走るワケ

2023年には過去最高の992社が自己株買いを発表し、その額は10兆円に迫る。2024年にその数がさらに増えても不思議ではない。ホンダはわずか1年で発行済み株式の4%を買い戻すと発表した。これを毎年続ける企業もある。日本だけではない。

投資家は、株価を上げるためにこのような手法を使っている企業を見ると、そのアドバンテージを享受するために株を買い、株価をさらに上げる。アメリカの有名投資家ウォーレン・バフェットもその1人で、日本の上位5つの商社の株式の約5%を購入した。

バフェットは報道陣に対し、「もし彼らが自己株を買い戻すのであれば、われわれは一般的にそれをプラスとみなす。株数が減っていくのは好ましいことだ」と語った。2023年に日本株を買った3分の1は多くの中国人を含むとされる外国人投資家だった。

買い戻しが殺到する背景には、日本取引所グループがプライム上場企業1840社に適用する新ルールがある。このルールは2025年3月に施行されるが、企業はこれに備えて今すぐ動かなければならない状況にある。

要求事項の1つは、株価が低い企業が株価を上げるための手段を公表することだ。取引所はいわゆる株価純資産倍率(PBR)を1.0倍以上にすることを望んでいるが、プライム企業の半数で1.0倍を下回っている。

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