「新宿線のテコ入れ」どうする?西武HD社長に聞く 東急・小田急の中古車両導入は「最適の選択」

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――そういった「強み」は沿線外からの集客力にはなりそうですが、沿線に住んでもらうためのアピールポイントにもなりますか。

なると思う。また、例えば所沢の開発でいえば、以前はベッドタウンと言われていた街を暮らしの場所、リビングタウンにしようということで開発を進め、商業施設などさまざまな工夫をしてきた。リビングタウン化への取り組みは着々とうまくいっていると思う。また、沿線は地盤が固く、災害に強いというポイントもある。

新宿線の「バリューアップ」は

――西武鉄道は旧型車両の置き換えに東急電鉄・小田急電鉄の中古車両を「サステナ車両」として導入します(参考:2023年10月1日付記事「西武が小田急・東急の『中古車両』を導入する狙い」)。新造車両の導入も含め、設備投資が他鉄道に比べ遅れ気味だったということはありませんか。

ほかの鉄道と比べて遅れているとは思っていないが、鉄道事業そのものが装置産業なので、安心安全を遂行するための設備投資はきっちりと続けている。池袋線はかなり先行して設備投資した。新宿線は東村山付近や中井―野方間の連続立体交差化など長期の計画が多い。

西武鉄道の車両
西武鉄道の2000系電車。東急・小田急の中古車両導入で置き換える予定だ(記者撮影)

――サステナ車両の導入は初期コストを抑えられるものの、他社ですでに30年以上使われた車両で、遠くない将来に再び置き換えの必要が生じると思います。それでも効果はありますか。

サステナ車両は導入についても、その後のメンテナンスについてもかなり入念なシミュレーションをしたうえで最適な選択をした。2030年度に全車両のVVVFインバータ制御(省エネ)化を実現するうえで、環境面でも収益の面でも効果的な設備投資であるということで決めた。

サステナ車両
「サステナ車両」として導入する小田急(左)と東急の車両(記者撮影)

――西武HDの株主総会では、毎年のように「新宿線のテコ入れ」を求める株主からの意見が出ます。新宿線について何らかの施策は検討していますか。

確かにほぼ毎年そのようなご意見がある。これは全経営陣が重く受け止めている。鉄道沿線の開発は地域との入念な検討を行いながら進める必要があるが、新宿線沿線も将来に向けてバリューアップとより住みやすい街づくりを検討している。今の段階では明確に言えないが、新宿線については本当に留意しており、地域貢献や車両なども含めて今後いろいろな角度からより一層検討していく。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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