藤川球児の選択が、至極「理想的」である理由 投じる一石が三鳥、四鳥になるかもしれない

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アンガーマネジメントでは、怒りの感情を表出させるにあたって、「怒ることで、その状況を変えられるか、変えられないか」を基準に、自ら「選択する」ことが求められます。

藤川投手は、アメリカで実績を残せなかったことについて、自分なりの「伝えきれない思い」があるようにも感じられます。自分が持つ本来の力を出しきれなかったと感じているのかもしれません。

しかし、それらを怒りに任せて主張したところで、藤川投手の野球人としての価値が高まるわけではないし、むしろ言い訳がましくなってしまいます。つまりは、怒ったところで状況を変えられない。ならばどうするか。アンガーマネジメントでは、怒って変えられないときには「現実的・具体的対処策」に頭を切り替えることを推奨しています。

地元愛が「好意の返報」を呼ぶ

今回のケースでは、その現実的対処策を決める際に、「地元への感謝」も大きく作用したのではないでしょうか。藤川選手の地元高知で、力いっぱい腕を振ることが、「自分が必要とされる喜びを感じ、家族と一緒に、子ども達の夢のために」という「強いモチベーション(=意気に感じること)」につながるのでしょう。

そして、「無給で投げる」という藤川流「男気」への評価も高まるという、相乗効果も出てくるでしょう。藤川投手の今回の選択は、自分の感情を大事にしながらも、結果としては非常に現実的・具体的対処策だったと言えそうです。

前記事では、「情動伝染」といって、怒りの感情が連鎖していく問題点を指摘しましたが、今回はその逆パターン、「好意の返報性」という人の心理について考えてみたいと思います。好意の返報性とは、好意を受けた人は、その相手に好意を返したり、自然と友好的な振る舞いをしてしまうという性質の心理です。

藤川投手の地元高知球団への復帰は、「好意の返報性」よろしく、様々な波及効果を呼びそうです。すでに出ている例として、地元・高知県が宣伝CMへの出演オファーを検討していることがわかっています。

高知の観光コンベンション協会は、藤川投手の入団発表を受け、協会内で緊急会議を招集。そこで、宣伝の協力を要請する案が出たのだそうです。現在は、同じく高知県出身の女優の広末涼子さんが出演中ですが、郷土愛の強い藤川投手が一役買えば、観光客の増加にも大きく貢献することでしょう。

四国アイランドリーグでの力投に、CM出演で見えてくるご本人の温かい人柄の印象が加われば、藤川投手を応援しようという気風も一層強まることでしょう。

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