データで判明!新紙幣発行の年「株価のジンクス」 2024年のビッグイベントで株価はどうなる

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次の表は新紙幣関連銘柄のパフォーマンスを示したものです。関連銘柄については広く捉えれば、多くの銘柄が関連してしまいます。例えば、自動販売機を例にあげるとどうでしょう。自動販売機メーカーが関連銘柄の代表ですが、より広く見れば自動販売機の部品を提供している企業や、さらに部品の素材メーカーなど、関連と考えられる銘柄が広がっていきます。

今回は新紙幣発行で恩恵が最も期待される銘柄の代表を客観的に選ぶために、日本自動販売システム機械工業会の正会員になっている企業のうち、東証のスタンダード、あるいはグロース市場に上場している8社を対象としました(表の注2参照)。

正会員銘柄は両替機メーカーや、システムを提供している企業など、新紙幣発行で直接、特需が期待される企業と考えられるからです。ただし東証のプライム上場企業を除いたのは、企業の規模が大きいため、他の部門の業績への影響度合いが大きくなり、新紙幣の特需の業績寄与がそれほどは期待できないと見られたからです。分析に使った企業の顔ぶれは、日本自動販売システム機械工業会のウェブサイトを参照することで確認ができます。

下表のパフォーマンスの計測は、対象銘柄の日次の株式収益率を単純に平均して、さらに指数化することで算出しました。実際には、日経平均株価に対する超過パフォーマンスを求めています。これは相場全体の動きに対して、対象銘柄が平均して新紙幣発行のポジティブな影響をどれだけ上回って受けるのかを見るためです。

ここで注意点があります。時代とともに企業は変わるため、足元では新紙幣関連企業であっても、遠い昔までさかのぼるとそうでなかった可能性もあります。そこで対象期間は比較的近年のイベントとして、2000年以降の2回に絞りました。

新紙幣関連銘柄への投資を考えるなら…

分析の結果、新紙幣発行開始前の6カ月間は日経平均株価を上回る超過収益率の傾向が見られました。一方、表では紹介していませんが、新紙幣発行開始後の収益率は明確な傾向は見られませんでした。新紙幣関連企業の実際の業績への影響は新紙幣発行“後”の売り上げ増などにも表れるものです。しかし、株価は利益に先行して動くため、新紙幣発行前に好パフォーマンスになるものと考えられます。

新紙幣発行にちなんだ株価のジンクスから、新紙幣関連銘柄への投資を考えるなら、2024年初に投資して新紙幣発行開始まで保有する姿勢がいいかもしれません。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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