日常の物語「きのう何食べた?」共感呼んだ必然 "永久的にやって"最終回ロスでseason3待望論

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人気なドラマであることは明白なのだが、これほどまでに「ロス」が巻き起こる理由をテレビウォッチャーの中村裕一さんはこう分析する。

「ドラマにハマるポイントは見る人によって異なります。俳優の何気ない仕草、声、立ち振る舞いからドラマ全体のストーリーや細かいエピソード、主人公はもちろん、そのほかの登場人物のセリフ、さらには主題歌、BGM、インテリアや小物まで、非常に多岐にわたります。

それゆえに、たとえ些細なツボでも、ハマったその人にとっては忘れられないシーン、かけがえのないセリフになる。つまり、積み重ねられたそれぞれの小さな“ロス”が集まることで、最後に大きな“ロス”へとつながるのではないでしょうか」

思い返せば、いくつもの名場面が胸にもよみがえる。

シロさん(西島秀俊)やケンジ(内野聖陽)のリビングでの何気ないセリフ、ドラマのオープニングの主題歌とともに流れるオフショットのようシロさんやケンジの画像、二人の周囲の個性的なキャラクターたち……小日向さん(山本耕史)やジルベール(磯村勇斗)などなど、見る人それぞれに「かけがえのない」と感じるものがあるだろう。

ドラマに描かれるのが「日常」だからこそ

ドラマ「きのう何食べた?」は、「日常」の物語だ。主人公たちは大きな事件に巻き込まれたりしないし、大恋愛や大失恋など、波乱を呼ぶ展開はない。ドラマの中に描かれているのが日々の営みだからこそ、「ロス」が起きるのだと中村氏は分析する。

「実は、“日常”はロスの宝庫なのです。日常は、決して取り戻すことのできない、貴重な、大切な時間の積み重ねによって紡がれています。それは私たちがリアルで過ごしている現実も同じです。

そういった日常を、大げさな演出を駆使せず、空気のように当たり前のように描くことで、見る人は自身の日常をオーバーラップさせ、ドラマや登場人物が自分にとって身近な存在になっていく。その“親近感”こそが、ドラマが終わった時の喪失感=ロスへとつながっていくのだと、私は思います」

そしてもちろん、「ロス」を克服するには次なる“日常”を期待するしかないではないか。中村氏は「season3」をこう推測する。

「可能性は大いにある……というか、続いてほしいと願っている人が大多数ではないでしょうか。

しかしながら、こればかりは俳優側のスケジュールや意向、テレビ局側の都合など不確定要素も多く、私の立場で断定することはできません。

けれども、これだけ盛り上がっているのですから、さらなるスペシャル版や映画化、そして続編に向けた気運があることは間違いないでしょう。個人的には可能な限り、息の長いシリーズになることを願っています」

いまはこの「ロス」をかみしめながら、「season3」の朗報を待つことにしよう。

(AERA dot.編集部・太田裕子)

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