創価学会を急成長せた池田大作と会員の「絆」 彼を「カリスマ」と捉える風潮への体験的異論

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私が創価中学に通っていた時のこと。当時の私は学校になじめずにいた。たとえば創価学園の入学式。スピーチをする池田氏が「この中で親孝行をしている人?」と呼びかけると、生徒全員が「ハイ!」と手をあげる。その情景は、私にとって「ハイル・ヒトラー」を連想させるものだった。私は集団の中で気分が悪くなった。創価学園の文化が合わない。同級生とノリが合わない。私は、学園を辞めたいと思うようになっていった。

そんな折、池田氏から書籍の贈り物をもらった。驚き慌てた私だが、周囲に促されて表紙の裏を見ると、池田氏の直筆で「伸城君、断固頑張れ」と書かれていた。瞬間、私は「池田先生って、僕の悩みを知っているの?」と思った。だが、池田氏に確認するわけにもいかない。私はうやうやしく本を部屋に飾った。すると「僕は僕のままでいいのかもしれない」と思えた。以降、私にとっての学園生活の色合いが徐々に変わっていった。

こういった出来事が人生の転回点となることが人にはある。それを学会員は「原点」と呼ぶ。池田氏は、私はもとより学会員一人ひとりと自身の間の「原点作り」を丁寧に行ってきた。

一人の顔色の悪さを見逃さない

ある集会で、池田氏と参加者の記念撮影会が行われた。記念撮影といっても、一緒に写る人数は膨大だ。多くの学会員が池田氏と接する機会を待つ中、同氏が突然、幹部をしていた私の父に話しかけた。「あの列の一番左に顔色が悪い人がいるだろう。心配だ」。その場の責任者を務めていた父は戸惑った。大勢がいる中で、そんなことにまるで気がつかなかったからだ。さらに池田氏は「私が心配していたとは絶対に言うなよ。お前(=私の父)が彼に体調のことを聞くんだ」と付言した。

その命のままに父は青年のもとへ。すると、確かに男性の顔色は悪かった。遠目でよく判別できたなと驚く父。しかも、その青年に聞けば、仕事の関係で一睡もできず、食事をする間もなく駆けつけてきたのだという。それを知った瞬間、父は「これが『一人を大切にする』ということか」と驚嘆したという。

実は、学会員と池田氏の間でのこういった話題は枚挙にいとまがない。もちろん読者の中には「池田氏のカリスマ性を強化するための誇大話だろう」と想像する人もいると思う。だが、現在、創価学会の信仰や活動から完全に離れている私が池田氏の誇大ストーリーを発信するメリットは何もない。

このエピソードは私の父が体験した“事実”であり、私はそれを客観的に記述しただけである。人への気配りを形式的に勧める人はいる。口で言うのは簡単だ。しかし、口先だけの人間に上述のようなことができるだろうか。しかも、相手に変なプレッシャーを与えないために「私が心配していたとは絶対に言うな」とまで言付けするのである。

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