新路線「仙石東北ライン」は被災地を救うか 宮城の"新たな大動脈"に集まる期待と課題

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仙石東北ラインを走るハイブリッド車両「HB E210系」。非電化区間も走ることができる

5月30日、東北・宮城で2つの“大動脈”が動き始めた――。1つは、東日本大震災で一部区間が不通となっていた「JR仙石線」。この日、JR東日本は高城町―陸前小野間の運転を再開し、4年2カ月ぶりに全線が復旧した。

もう1つは、東北線を経由して仙台駅と石巻駅を結ぶ新路線「仙石東北ライン」だ。仙台駅を出発した東北線は盛岡方面へ、仙石線は石巻方面へと別方向に向かうが、両線は松島付近で接近する。そこへ新たに接続線を設置して両線をつなげた。

仙石東北ラインでは、専用の車両が使用されている。「HB E210系」という、ディーゼルエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車両だ。仙石線、東北線は共に電化区間だが、方式が異なる。仙石線は直流で、東北線は交流だ。さらに、両線を結ぶ接続線は非電化区間でもある。こうした事情により、架線からの電気に頼らないディーゼル車両が使われることとなった。

ディーゼルエンジンで列車を動かすのではなく、ディーゼルエンジンによる発電と減速時に蓄電池に充電した電力とを併用してモーターを動かす仕組みで、JR小海線などでも採用されている。一般的なディーゼル車両より窒素酸化物など有害物質の排出量が低減され、環境にやさしいという。

開業初日に見えた光景

この日、始発から3本目となる仙石東北ラインの列車は、石巻駅に向けて仙台駅を8時18分に出発した。沿線の利用者と鉄道ファンでほぼ満員だった。車内には、ハイブリッドシステムの作動状況を示す液晶モニターが設置されている。熱心なファンがモニターを写真に撮ると、そばにいた乗客は「なんだこれ?」という表情でモニターにしげしげと見入った。ハイブリッド車両は一般乗客の間では認知されていないようだ。

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