クリスマスチキン戦線開いた「モスチキン」の軌跡 「チキンの向き」にも影響した、社内体制の変化

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モスバーガーは日本生まれのチェーンとして、和の素材を使用することで独自性を訴求してきた。テリヤキバーガーやモスライスバーガーなどがその代表的なメニューだ。KFCとの差別化、そして日本生まれのDNAを受け継いでいるため、モスチキンは「和風フライドチキン」として誕生することになったのだ。

発売は1992年9月15日。反響は同社で予想していた以上に高く、店舗の人手が足りなくなったり、生産が追いつかず、店舗への納品数に制限をかけざるを得なくなったほどだった。

このようにモスチキンにより、モスバーガーにとってクリスマスは、「一年でもっとも忙しい日」になったのだという。

モスチキン5本パック1500円(撮影:今井康一)

そのモスチキンの販売数が、ここ数年伸び続けている。

背景としては、冒頭に述べたようにホットメニューとしてのチキンがコンビニで入手しやすくなり、日常食としての認知が高まったことがある。コロナ禍ではテイクアウトの唐揚げ店が増加した。つまりチキン市場が拡大したのだ。

夏の定番商品「ホット スパイスモスチキン」

夏のモスチキン需要アップ策として、2021年7月から発売した期間限定の「ホット スパイスモスチキン」(350円)も、2カ月で例年の倍の190万本を売り上げるほどのヒットに。夏の定番商品となり、3年目を迎えている。

工場で一度揚げて冷凍したものを店舗で揚げていく(撮影:今井康一)

実はこの「ホット スパイスモスチキン」、過去に何度も発売しては失敗してきた商品だ。それがなぜ、夏の定番商品へと返り咲けたのだろうか。

モスフードサービスのマーケティング本部商品開発部長の濱崎真一郎氏に聞いたところ、「お客さまが食べているところを想像し、改良を加えた結果」だという。

モスフードサービス マーケティング本部商品開発部長の濱崎真一郎氏。同社におけるプロダクトマーケティングを率いる人物だ(撮影:今井康一)

過去の商品では、モスチキンにスパイス粉末やソース等を別添えするスタイル。味はおいしいが、食べるまでにひと手間がある、手が汚れるなど、食べにくさが難点となっていた。そこで改良した商品では、あらかじめスパイスオイルをかけてから提供する形に変更したという。

小さな変化だが、これはモスフードサービス内部における、体制の変化を象徴している。同社ではちょうどコロナ禍に入る2020年から、商品開発とマーケティングがいっしょになったプロダクトマーケティングの体制へと切り替えてきた。

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