脳損傷の患者に「脳インプラント」という光明 初の有効な治療法になる可能性

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交通事故で外傷性脳損傷を負った実際の患者のスキャン画像に基づくコンピューター・レンダリング。転倒や交通事故後に慢性的な問題を抱える人々が、脳インプラントを装着した後の認知力テストでより良いスコアを獲得したことが、新しい研究で明らかになった(イメージ画:Andrew Janson/Butson Lab via The New York Times)

外傷性脳損傷により、500万人以上のアメリカ人が後遺症を抱えている。単純作業にも集中できず、仕事を辞めたり、学校を中退したりするケースは多い。

12月4日に発表された研究は、こうした人々に一片の希望をもたらすものだった。中等度から重度の脳損傷を負った5人の頭に電極を埋め込み、電極で脳を刺激すると、認知テストの成績が向上した。

大規模な臨床試験で同様の結果が得られれば、インプラントは慢性の脳損傷に対する初の効果的な治療法になる可能性があると研究者らは述べている。

驚きの改善効果

「この問題に対して有意な変化をもたらせることを示す最初の証拠だ」と、研究を主導したニューヨークのワイル・コーネル医科大学院の神経科医ニコラス・シフ氏は語った。

インプラントを受けた治験ボランティアの1人、ジーナ・アラタさんは22歳の時に交通事故に遭い、疲労や記憶障害に加え、感情を制御できないという問題を抱えるようになった。ロースクールへの進学を断念し、カリフォルニア州モデストで両親と暮らしているが、仕事を続けることはできていない。

事故から18年後の2018年にインプラントを受けたアラタさんは、人生が大きく変わったと言う。「普通の人間になって、会話ができる。自分の改善度合いに驚いている」。

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