「あの商品が消えた」、空前の円安で100均に異変 生き残りを懸けて「高額商品」がじわりと増加

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現状、大手各社は仕様変更などにより100円バケツの販売を続けているが、消費者はコスパの悪化を敏感に察知する。店頭で100円の”円安対応バケツ”を手に取り、購入するか悩んでしまう。

このため300円や500円の蓋付きバケツや折りたたみバケツも並べて、どれを買うかの判断を消費者に委ねる店舗は少なくない。調理道具や収納用品なども同様で、定番商品ほど素材やデザインとともに価格が多様になってきている。たとえ100円で売れなくなっても、生活必需品を求めるニーズに応え続けるためだ。

100均大手各社の利益推移

ワッツは本業のもうけとなる営業利益が、2021年8月期の約17億円から、2022年8月期は約10億円、2023年8月期は6.2億円と漸減が続く。最大の要因は円安進行による仕入値上昇だ。さらに円安対応で商品の改廃を進めたことで、一時的に品不足が起きて機会損失を招いたことも響いた。

足元では新規出店を抑えて、既存店のテコ入れや不採算店閉鎖を実施して足場固めを急いでいる。

高単価品は値頃感を訴求

業界3位のキャンドゥも状況は同じで、2021年11月期に9.6億円だった営業利益は、2024年2月期に2700万円まで落ち込む見通しだ。2022年にイオン子会社となったのを機に、イオン系店舗への出店を進めるほか、雑貨中心の新業態を出店するなどして収益改善を進めている。

ワッツ、キャンドゥともに、100円商品の仕様変更を進めて業績改善を図るが「効果は限定的」と口をそろえる。だからこそ高単価品をそろえることで、粗利益率の改善を図ろうとしている。

これまでも100円ショップでは、高単価品の取り扱いについて試行錯誤を続けてきた。しかし、「レジで100円じゃないとわかると、買うことをやめるお客様は珍しくなかった」(キャンドゥ)。

試行錯誤しながら品ぞろえを広げていった結果、キャンドゥでは商品構成の15%前後を高単価品が占めるまでになったという。

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