札幌の「ヤジ排除問題」報じ続けるメディアの信念 映画手がけたHBCの山﨑裕侍監督に話を聞いた

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――利益だけのつながりなんてもろいですからね。

僕もまったく違う事件のとき、警察の不祥事を批判的に報道したことがありましたが、同じ刑事部の幹部が、『お前の言ってることは正しいよ』と言ってくれる人もいて、その人とは信頼関係はできてるかなと思いましたね。

関係が築けなければ、飼い犬に手をかまれたとの思いはあるでしょうね。とある警察署担当の記者が毎日通って情報をもらっていたんですけど、批判的な報道をした途端に「お前は帰れ」と言われたと聞きました。たぶんマスコミのことをそういう目で見ていたんだろうなと思いますね。

――そのときはどうされるんですか?

そのときはどうとでも言ってくれって感じですよね。こちらも、ほかの事件や事故のときには取材をしなきゃいけないので、それはそれ、これはこれという感じで、厚顔無恥的に。何もなかったかのように取材に行きますから。

それってメディアに大事なことだと思うんですよね。自分が苦手な相手だったり、過去にトラブルがあった相手であっても、向き合うぐらいのずうずうしさがないと取材なんてできないですし、後ろに視聴者を背負っているという意識があるので、そこで上下関係が出来上がるとおかしいですからね。

何でも言っていいというわけではない

――答えたくない相手に対峙するというのも難しいですね。

だけど大事なのは、相手が取材に答えないからといって、何でも言っていいわけじゃないということですよね。答えないなら答えない理由なり、相手の事情なりをちゃんと知らないといけないし。相手が答えなくても、いろいろと取材することで相手の真意をちゃんと伝える報道ができたら一番いいんですよね。

ただ今回のヤジ排除に関してはなかなかそれができなくて。出せないあやふやな情報はたくさんあるんですけれども、報道できるまでの確証を持てなかった。何も答えない人間をどう取材するか、というのは本当に難しいですね。僕もしょっちゅうそこの壁にぶつかっています。

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