創造分野でAIが今「できること」と「できないこと」 AIは人間を超える創造活動をできるか?

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虚数の導入は、数学を大きく発展させた。数学のみならず、物理学、工学、その他の科学においても、理論的な洞察と実用的な応用を大きく進展させた。

このように考えると、実際の体験からの脱却こそが、科学を進歩させてきたと考えることができる。

AIが創造活動をすることは可能か?

AIは、シンボルグラウンディングができないという意味で、人間とは異なる世界理解をしている。では、それに基づいて、新しい分野を切り拓くことがありうるだろうか?

AIは、すでにいくつかの分野で、創造と言えなくもない活動をしており、それらはすでに成果を上げつつある。

特に顕著なのが、「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」だ。AIによって無限ともいえる物質の組み合わせを試み、それに偶然の変化を与え、その中でものになりそうなものをピックアップするという方法だ。例えば、80億通りもの候補の中から最適な構造を見つけたなどといわれる。

生命科学の分野で取り入れられ、創薬などに活用されている。試料の作製に手間がかかり大量のデータを得るのが難しいなどの課題を抱える材料分野でも、成果が出始めている。

無限ともいえる組み合わせの中から役に立つのはどれかを見出すのは容易ではない。材料研究者は、これまで実験と考察を繰り返し、経験を積んで、求める特性を備える材料を開発してきた。マテリアルズ・インフォマティクスは、それを塗り替えつつある。これまで10年近い期間が必要とされる材料開発を、10分の1に短縮することが可能になっているという。

このように、「非常に多くの組み合わせの中から役立ちそうなものを選んでいく」というのが、AI的な創造なのだろうか? それは、材料選択以外にも適用が可能か?

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