混雑回避に安さが魅力!「こだま」今ドキ利用事情 東海地方の貴重な足、インバウンドも急増中

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「こだま」には独自の安価な商品がある。JR東海ツアーズが販売する旅行商品「ぷらっとこだま」は、「のぞみ」の通常運賃より最大3400円安く、800〜1500円を追加すればグリーン車にも乗れるほか、売店で使用できるドリンク券もつく。乗車前日までネットで購入できる手軽さから、ビジネス客にも人気が高い(変更や乗り遅れ時の取り扱いには制限あり)。

JR東海の会員制ネット予約サービスであるエクスプレス予約にも、3日前までの予約を条件に大幅に割り引く「EXこだまグリーン早特3」をはじめ、「こだま」向け商品がある。これらを買って「こだま」のグリーン車で仕事をする常連客もいるほどだ。

「ぷらっとこだま」は通常より最大3400円安い(撮影:栗原 景)

のぞみの”通過待ち”の間、駅弁も買いに行ける

さらに、鉄道ならではの楽しみ方ができるのも、「こだま」の魅力だろう。

折しも今年10月いっぱいで、東海道新幹線の車内販売が原則廃止され、いったん乗車したらグリーン車を除いて飲食物の購入はできなくなった。その点「こだま」ならば、多くの駅で「のぞみ」の待避(通過待ち)をするため、停車時間中にホームや改札内の売店で駅弁を購入できる。

列車が数分間止まっている間、「港あじ鮨」(三島駅)や「うなぎ弁当」(浜松駅や掛川駅)といった新幹線沿線の名物駅弁を買い、富士山や浜名湖の車窓風景を楽しみながら味わう──。そんな懐かしい列車の旅を味わえる。

実際、JR東海が「こだま」向けの安価な商品を提供する背景には、グリーン車中心に相対的に稼働率の低い「こだま」の利用促進がある。

あるいは近い将来に「こだま」が東海道新幹線の主役となる可能性もある。最高時速500キロメートルで走るリニア中央新幹線がいずれ開業すれば、速達性を求めるビジネス客などはリニアへとシフト。JR東海は東海道新幹線において新たな価値を創出する必要に迫られるからだ。

もともと東海道新幹線はトンネルが全線の17%と少なく、沿線に富士山などの絶景を多数抱えている。ゆとりある旅を楽しめる観光列車として、「こだま」が再評価される日が来るかもしれない。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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