罪深き菅首相の「一点突破」戦法

罪深き菅首相の「一点突破」戦法

「野田財務相を軸に」「鹿野農水相擁立も」「小沢鋭仁前環境相が出馬検討」といった記事が飛び交う。2日の菅首相の退陣承諾から1週間余が過ぎ、民主党内の空気は一気に後継代表問題に移った感がある。

ところが、首相は辞める時期を明言しない。

退陣を容認しながら、当初は来年1月頃までの続投の素振りを見せ、ついに片腕だった岡田幹事長も「長い居座りはないと確信している」と見放した。それでも9日の国会答弁で「8月中に瓦礫処理を。その後の処理につなげ、原発事故処理に一定のめどがつくまでは」と発言した。この期に及んでも「8月以降までの延命」を必死で探っている様子だ。

“ダッチロール”を続け、“立ち枯れ”状態だった菅政権は、いまや完全に“死に体”である。“レームダック”の首相を“安楽死”させる方法として、予算関連法案と引き替えに退陣させる“予算花道論”が浮上しそうだが、のまなければ、菅首相は“野垂れ死に”となる可能性が高い(“ ”内の用語の真の意味は、拙著『まるわかり政治語事典』[6/15発売]を参照いただきたい)。

与野党とも、22日閉幕の国会の短期延長を前提に、6月中の政権幕引きが大勢となりつつある。なのに、「辞めない首相」は異様な粘り腰を見せる。飽くなき権力欲、言い替えれば往生際の悪さは、野党時代からの菅首相の強い個性だ。

「退陣承諾表明の裏で続投作戦」という手口は騙し討ちと映るが、初めから謀計のシナリオを用意していたのではなく、おそらく首相はその場をしのいだ後に次の手を考えるという得意の「一点突破」戦法で臨んだと見られる。

続投後に衆議院解散のチャンスを探り、さらに一点突破を図る。若い頃から死中に活を求める生き方をしてきた菅首相は、この方法で窮地脱出を夢見たのではないか。だが、この一点突破主義が致命傷となった。

将来の展望や中長期の設計図を構想せず、そのために大震災後の3カ月を事実上、空費してしまった。

菅首相の発想と政治手法も空費してしまった大きな原因だったことは否めない。

(撮影:尾形文繁)

塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数

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