AKB48スタイリスト・茅野しのぶさんの挑戦と挫折 痛恨のミスと秋元康氏の言葉で考えを改めた

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茅野さんファンの方はもっと新しいAKB48を求めていたのに、私たちプロデュース側は「いつも通り」を求めていた。

この時に初めて、「立場によって求めるものが明確に違うんだ」って気付いたんです。それはアイドル本人もしかりだったかもしれません。

三者の要望はそれぞれ異なるから、それらがほんの少しでも交わったところをくみ取って、感動できたり、共感できたりする部分を衣装で魅せる。それがプロとしての、私の仕事だと考えています。
元AKB48峯岸みなみさんの卒業ドレス。「“AKB48らしさ”をとことん詰め込みたくて、色んな赤チェックの生地を取り寄せて使用しました」(茅野さん)(写真:洞澤 佐智子(CROSSOVER))

ドラマチックなことが大好き

絶対的な「正解」がない衣装デザインの世界。さらに「アイドル衣装」は、前例も少ないニッチな業界でもある。

そんな中、プロとして“突き抜け続ける”ことができるのは一体なぜなのだろう。

彼女の原動力を聞くと「私、ドラマチックなことが大好きなんですよね」と照れくさそうに笑顔を見せる。

茅野さんアイドルたちを見ていると、なんだか「文化祭の前日」がずっと続いているみたいだなって思うんですよ。

例えば、AKB48はよく音楽番組の収録前に円陣を組むのですが、「メークさんや衣装さんが寝る間を惜しんで、この日のために準備してくれました。テレビの向こう側にいるファンの人を思って、最高のパフォーマンスをしましょう!」って大声で叫ぶんです。こんなに熱くなることって、普通に生きていたらほとんどないですよね。
茅野さん短期間で衣装を完成させなくちゃいけなかったり、常に複数の案件が進行してたりでてんやわんやな毎日ですけど、「ドラマチックな出来事がたくさんあったな。でもすごく楽しかったな!」って、最後に笑顔で言える人生にしたい。

その思いが、私を突き動かしているのだと思います。
(写真:洞澤 佐智子(CROSSOVER))
株式会社オサレカンパニー 取締役・クリエイティブディレクター
茅野 しのぶさん


創設当初より総合プロデューサー秋元康氏の下で衣装担当として活動。その後、デザイン・衣装・ヘアメークなどの事業を担うオサレカンパニー社のクリエイティブディレクターに就任。これまでに制作した衣装はおよそ35,000着。メンバーの個性を引き出す豊富な衣装デザインとバリエーションに定評があり、AKB48以外にも、声優、コスプレイヤー、2.5次元アーティストの衣装、学校制服・医療制服のプロデュースなども行う。2022年3月よりオサレカンパニー取締役に就任

取材・文/於ありさ 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/柴田捺美(編集部)

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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