松屋「焼肉タレ英訳騒動」で批判集めた意外なもの SNSでの盛り上げ施策より消費者が気になるのは…

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松屋は2019年11月、公式ツイッター(当時)で「松屋の定番。オリジナルカレー。まもなく本当に無くなります」と終売を告知した。投稿には「#松屋は牛めし屋」のハッシュタグも添えられていたことから、松屋からカレー全般が姿を消すのでは、と感じたファンからは、惜しむ声が相次いだ。

深夜の発表だったが、「オリジナルカレー終売」の速報は、すぐさまSNS上で拡散され、未明に産経新聞ウェブ版が「松屋、カレーやめるってよ 牛丼の松屋、公式ツイッターで告知」の見出しで記事化すると、さらにタイムラインには嘆きが増えていく。

結論から言えば、松屋からカレーは、なくならなかった。約12時間後の翌朝になって、オリジナルカレーに代わり、期間限定だった「創業ビーフカレー」が定番商品となると発表されたのだ。すると、カレー系商品の継続を喜ぶ反応のみならず、「心配して損した」との失望も続出した。

産経の見出しは、結果的に先走りすぎた感もあるが、同様の勘違いをしていた人も多かっただろう。一連の経緯によって、松屋は「炎上」し、多大なバッシングを受けた。その影響があったのかは不明だが、出鼻をくじかれた「創業ビーフカレー」は短命に終わり、「オリジナルカレー」の復帰を経て、2023年1月からは、創業ビーフカレーを「パワーアップ」させたという「松屋ビーフカレー」となっている。

「松屋のタレ」の一件を聞いて、もうひとつ筆者の頭に浮かんだことがあった。コンビニエンスストア「ローソン」のプライベートブランド(PB)商品をめぐる騒動だ。2020年春のリニューアルで、商品パッケージが一新されたものの、ブランド内の統一感を目指すあまり、遠目からでは商品間の見分けがつきにくいと非難をあびたのだ。

人気デザイナーの佐藤オオキ氏がひきいるデザインオフィス「nendo(ネンド)」をクリエイティブパートナーに迎えて、「ご家庭での生活を豊かに楽しんでいただく」ことを目的とした施策だった。

企業側のねらい通り、「おしゃれでカワイイ」「シンプルでスッキリしている」といった反応もあったものの、SNS上では「不便だ」との意見も散見された。結果的に、商品写真を拡大するなどの対応が取られた。

成功した事例も存在する

ただ、諸刃の剣である以上、成功するケースも当然ある。

「SNSで寄せられたニーズを、プロモーションに活用する」という意味では、ハンバーガーチェーン「バーガーキング」の例も思い出される。2019年に「下北沢店作ってくれや」と一般ユーザーから投稿されると、半年後に公式アカウントが「作ってんで!」と返答。軽妙な口調に加えて、工事中の店舗に、そのやりとりのスクリーンショットが貼り出され、さらなる話題を呼んだ。

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