「残業拒否だが仕事熱心」若手社員の新しい理想像 若い合理的な野心家が日本企業を変革する

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さらに、複数の人事部門関係者から、「野心的な新人・若手を目にするようになった」という興味深い指摘がありました。

「ある新人から『30歳までに独立して起業したいので、向こう7年間よろしくお願いします』と言われて、腰を抜かしました。彼にとって当社は、将来の起業のための武者修行の場だそうです」(コンサルティング)

「ある若手から海外拠点に転勤したいという希望がありました。海外で人脈を作り、経営管理の経験を積み、新しい事業を立ち上げ、最終的には社長になりたいそうです。『へえ、そこまで考えているんだ』とビックリしました」(エンジニアリング)

無鉄砲な野心家、合理的な野心家

バブル期までは、新人研修の最初のあいさつで「俺は社長になる!」と高らかに宣言する野心的な新人がよくいました。その後、就職氷河期を経て、若者が一般的に草食化したとも言われ、すっかりこうした宣言を耳にしなくなりました。

しかしここ数年、トップ校で学生起業が盛り上がっている通り(『トップ層の東大生が起業を選ぶようになった必然』参照)、優秀な新人・若手ほど「起業に挑戦し、世の中を変えたい」「社長になってみたい」という野心を持っているようです。

バブル期までの野心家は、「社長になる」という野心があるだけで、そのためにどう研鑽し、どう行動するというプランがまったくありませんでした。「とりあえず言ってみただけ」の「無鉄砲な野心家」でした。

それに対し最近の新人・若手は、野心を持つだけでなく、実現するためのプランを緻密に考え、それを着実に実行しています。「合理的な野心家」と言えるでしょう。

「その新人は、30歳で起業するために、社内でデータサイエンスを学び、どういうタイプのプロジェクトに参加し、途中でMBAに留学し、といった7年間の計画をちゃんと練っていました。最初は『うさんくさいヤツだなぁ』と思いましたが、話を聞いているうちに応援したくなってきました」(コンサルティング)

新人・若手というと、「権利ばかり主張する」「売り手市場で図に乗っている」「先輩社員への配慮がない」などと、とかく批判されがち。たしかにそういう面はあるでしょうが、新人・若手が野心を持って生き生きと仕事をすれば、会社が良い方向に向かうはず。

経験豊富な先輩社員と手を組んで、日本企業・日本社会の変革を主導することを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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