11月から急増!「冬の食中毒」の正しい予防と対策 高齢者は重篤化、下痢や嘔吐で苦しむ人も

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「感染者の便が1g、すなわちティースプーン1/4杯程度あれば、50億人を感染させることができるといわれるほど。

生存期間が長く、感染者が触ったテーブルなどの表面では、1週間ほど生存できます。冷蔵庫で管理するような食品だと10日間ほどは食品中に残ったままです」

これほど手ごわいウイルスだからこそ、“子どもから始まり家族全員がノロでダウン”といった家庭内感染が起こりうる。さらに厄介なのが、ウイルスの“増殖のしやすさ”。

「ノロウイルスが爆発的に増殖するのは、人の小腸の中。感染した人が“ウイルス増殖器”となり、大量のノロウイルスが含まれた便を排出する。そして一人の感染から爆発的に流行してしまいます」

しかも、インフルエンザなどは一度感染すれば原因ウイルスに対しての免疫ができるが、ノロウイルスは何度も感染してしまうことがある。

「変異の激しいノロウイルスは複数の遺伝子型があり、それをカバーできるワクチンがありません。しっかりした感染予防と、日頃の体調管理などが重要になります」

激しい嘔吐と下痢で「便器が足りない」

家庭内に感染者がいなくても、職場や駅など、他者と共同で使うトイレの利用で、知らない間に感染してしまう可能性もある。症状は、前触れなく突然現れるのが特徴だ。

「ウイルスに感染してから早いと18時間、だいたい24~48時間の間で症状が現れます。初めは腹痛や嘔吐が突然起こり、そのあとに下痢、発熱やだるさが出始めます。

特に嘔吐と下痢は激しく、下から便が出ている間に上から吐き気が襲うため、患者さんの中には『便器が足りない』という人もいます」

トイレは感染拡大の原因になりやすい場所。嘔吐したら流す前にフタを閉めよう ※写真はイメージです(写真:週刊女性PRIME編集部)

しんどいので感染が疑われる多くの人が医療機関を受診するが、実はノロウイルスの感染症検査には制限がある。

「健康保険で検査ができるのは、重症化リスクの高い3歳未満か65歳以上、その他はがんなどの重症化リスクがある人のみ。健康な成人の場合は検査による確定診断は行われず、『おそらくノロウイルスでしょう』と診断が出ます。

治療としては吐き気止めや整腸剤が処方され、経口補水液など十分な水分を取って休養していただきます」

症状は3日程度で治まるのが一般的だが、水様便があるとウイルスの排出は続く。

「人にうつさないためにも、外出するのは便の状態が良くなってからが望ましいです。罹(かか)ると下痢や嘔吐が激しく、水分を取れない、取っても出てしまうのがノロウイルスの特徴。

そのため脱水になりやすく、腎不全になって入院という重症化パターンもあり得ます。特に高齢者や子どもは感染しないように十分気をつけたほうがいい」

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