(新連載・第1回)条件が変わったのに考え方はもとのまま

(新連載・第1回)条件が変わったのに考え方はもとのまま

東日本大震災によって日本経済の条件は大きく変わった。それに合わせて、経済に対する考え方を大きく変える必要がある。

企業はすでに対処を始めている。市場条件の変化に適切に反応しなければ、淘汰されるからだ。

ところが、経済政策の立案者、ジャーナリスト、エコノミスト、そして大多数の国民は、これまでと変わらぬ考えを続けている。大震災による条件の変化は極めて唐突に起こったのでやむをえない面はあるが、企業ほどの切迫感がないからだろう。

この結果、経済の実態と人々の考え方との間に、大きな齟齬(そご)が生じている。政府の政策に変化の先取りを期待するのは無理だろうが、せめて現実に追いつくことが必要だ。そうでないと、経済政策や制度が経済活動の足を引っ張り、変化を阻害する。

経済実態と考え方との乖離は、グローバルな事項に関して、最も顕著に生じている。

震災によって日本の対外経済関係が大きく変わったことは、貿易収支にすでに表れている。これまで日本の貿易収支は、ほとんどの期間で黒字だったが、4月の貿易収支は大幅な赤字になった。国内の生産制約や発電用燃料の輸入増加を考えると、赤字は今後もかなりの期間、継続するだろう。

また、企業(特に大企業)は震災による国内生産条件の悪化に対応して、生産拠点の海外立地を加速させている。これは日本の貿易構造をさらに大きく変えるだろう。

ところが、復興に関する政策論議は、以上のような変化を考慮に入れておらず、これまでと同じ産業を国内に復活させることを前提として政策を考えている。電力についても、産業構造を変えて電力需要を抑制するのでなく、これまでの産業構造で必要な電気を確保するために、火力発電へシフトしようとしている。

復興財源に関してもそうだ。財政構造を大きく変えようとするのでなく、つじつま合わせに終始している。第1次補正予算の財源は、その象徴だ。この傾向が続けば、復興財源の大部分は国債に依存することとなり、民間の資金需要と競合して金利を上昇させる可能性が高い。

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