誤解されてきたガンディーと、その非暴力思想 『ガンディーの真実』間永次郎氏に聞く

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『ガンディーの真実』著者の間 永次郎氏
間 永次郎(はざま・えいじろう)/滋賀県立大学人間文化学部講師。1984年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2017年東京大学大学院総合文化研究科特別研究員、20年独マックス・プランク研究所宗教・民族多様性研究シニア・リサーチ・フェローを経て、21年から現職。著書に『ガーンディーの性とナショナリズム』など。(撮影:尾形文繁)
非暴力・不服従運動でインドを独立へ導いた、ガンディーの思想と実践を掘り下げていく本。反英闘争の中で、「塩の行進」をはじめとする大規模な抗議行動は実は総計で4年弱。残り50年以上は地道な日々の自己変革に費やされた。食・衣服・性・宗教・家族……。ガンディーにとって真に重要だったのはそれらの生活実践であり、不服従運動はその積み重ねの上にあった、と著者は説く。
『ガンディーの真実 ――非暴力思想とは何か (ちくま新書 1750)』(間 永次郎 著/ちくま新書/1034円/288ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ガンディーの非暴力思想は誤解されていると。

彼のいう非暴力は単に腕力を用いないということではありません。臆病者の無抵抗か暴力を用いた抵抗かを選ぶとしたら、迷うことなく暴力を勧めるとまで言っています。彼の非暴力思想には3相あって、死をも恐れない勇敢さと相手の良心に訴える力を持つ「完全な非暴力」、暴力によってでも勇敢に立ち上がり抵抗する「非暴力的暴力」、そして臆病が理由の「偽善的無抵抗」。上辺だけの非暴力は最悪の道徳的堕落、それは暴力よりも卑しいと考えた。南アフリカで最初の人種差別を受けた際、彼が衝撃を受けたのは、諦めて声を上げない同胞に対してでした。

彼の非暴力思想の本質を表す言葉が、サンスクリット語の「サッティヤーグラハ(真実にしがみつくこと)」。公私をまたいだ生活全般において、真実に対し妥協を許さない断固たる実践。それこそが力を生み出す。非暴力とはその真実の表れの1つと言っています。

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